日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

運動はいくつで始めても遅くない!【ベネッセ原田氏】

第4回 ランナーにおすすめしたい「5拍子」の呼吸法

 原田泳幸=ベネッセホールディングス会長兼社長

仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム、ベネッセホールディングス会長兼社長の原田泳幸氏(67歳)の最終回では、ご自身も実践しているランニング時のおすすめ呼吸法、そして実感している運動の効果について語っていただきます。

呼吸は、足の運びに合わせて、3回吐いて、2回吸う5拍子で行うのがお薦めです。写真は2015年11月のおかやまマラソンでのショット。
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 走るときは一般的に、足の動きに合わせて1、2、1、2…のリズムで、2回吐いて、2回吸って…の2拍子の呼吸になります。これを、1、2、3、1、2…のリズムで、3回吐いて、2回吸う5拍子で呼吸をするのが私のやり方です。

 なぜ5拍子がいいかというと、2つの理由があります。1つは、2拍子だと偶数なので、1、2、1、2のリズムの頭にくる足が右足なら右足と決まってしまい、片方の足だけに負担がかかります。これを奇数の5拍子にすると、リズムの頭が左右交互に変わるので、負担が均等になるのです。私も2拍子の呼吸をしていたときは、よく腰が痛くなりましたが、5拍子の呼吸に変えてからは改善しました。

 もう1つは、吸う回数より吐く回数を多くすることで、疲労の原因となる二酸化炭素の蓄積を防ぐことができます。余談ですが、走っているときや泳いでいるときに苦しくなったら「ワァーッ!」と大きな声を出して息を吐くと、疲れがリセットできます。

 私は長年、ジャズドラムを叩いているのでリズム感があるせいか、すぐにできるようになりましたが、難しいと感じる方も多いようです。でも、腰や膝が痛くなる人にはとくに、試してみてほしいですね。できるようになるときっと、改善すると思います。

 あとは、とくにマラソンでは、足で地面を蹴って走ろうとしないことが大切です。私も以前は足を使っていたのですが、それでは長距離は走れません。下腹部のコア(体幹)を意識するように、背筋を伸ばして、身体を前に傾けると、自然に足が前に出る。体幹を鍛えていれば、足に力は入らずに、スーッと後ろに流れます。足は脱力する一方、腕は力を入れるように、肘を後ろに引いてしっかり振る。これに集中していると、ラクに走れるようになります。私も疲れてくるとつい、足で走ろうとしてしまうので、この姿勢を意識するようにしています。

運動を続ける一番の理由とは

運動は脳の活性化に欠かせないと実感しています。写真は、2013年の宮崎シーガイアトライアスロンより。
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 運動をするようになって、私の寿命は数十年延びたと感じています。以前はパーティーなどに招かれた際に、立ったまま挨拶を聞いているとすぐに足が痛くなったものでしたが、今では立ち通しでも疲れません。また、50代半ばに膝が痛んで正座ができなくなったとき、整形外科の医師には「加齢で関節の隙間が狭くなっているので、つきあっていくしかない」と言われましたが、運動をして筋力をつけることで改善しました。

 私が30歳のとき、久しぶりに会った父親の背中が曲がって小さく見えて、「親父も年を取ったな」と感じてショックだったことを覚えています。でも、今にして思えば、父は当時まだ60歳だったんですよね。同窓会に出ても「同じ年齢なのに老けているな」と感じる人もいる。自分が67歳の実年齢より、肉体的にも、精神的にも若いと感じられるのは、やはり運動をしているおかげだと思います。

 何のために運動をするのかと聞かれれば、こうした成果はもちろんですが、一番は脳の活性化のためですね。年齢を重ねてくるとどうしても、経営の仕事で重要なスピード感や集中力が落ちてきます。しかし、運動を続けることで肉体的にも、精神的にも元気になって、自分に自信が持てるようになると、仕事に対するエネルギーも満ちてきて、脳もしっかり働くようになります。逆に運動をしなければ、どんどん衰えていってしまうでしょう。

 昨年は日々の運動に加えて、2月には東京マラソン、7月には宮崎シーガイアトライアスロン、11月にはおかやまマラソンに出場しました。その度に新しい発見や学びがあります。私は60歳を目前にして運動を始めましたが、もっと若い頃から始めていればと感じます。でも、運動はいつからでも始められますし、筋力はいくつになっても鍛えられます。経営者はもちろんのこと、健康で長く仕事を続けたいというビジネスパーソンには、1日でも早く運動を習慣にしてほしい。心からそう思いますね。


(まとめ:田村知子=フリーランスエディター)

取材を終えて

 原田さんはこれまで、十数冊の著書を上梓しているが、そのほとんどは依頼を受けて書くことになった、経営論などのビジネスに関するものだ。しかし、自身の体験的身体哲学とビジネス論を綴った『ストイックなんて無用だ』(ポプラ新書)という著書だけは、自ら出版社に企画を売り込んだという。

 本書には原田さんが運動を始めることになったきっかけや、60代でフルマラソン、トライアスロンにチャレンジするまでの道のり、そうした経験を通じて得られた知識やノウハウが語られている。そこには「運動の素晴らしさを伝えたい」という、原田さんの熱い想いが溢れている。

 今回の取材でも、多忙で限られた時間の中、ここでは紹介しきれないほどの様々なエピソードを語ってくださった。原田さんのような強い意志を持つことはなかなか難しいかもしれないが、それでも「最初からストイックになる必要はない。成果が次へのモチベーションになって、ストイックになっていく」という話には共感した。(田)

■原田会長のカラダ資本論
第1回 私が60歳目前で運動を始めたワケ
第2回 トライアスロンに取り組む経営者が多い理由
第3回 健康維持には時間とお金の投資が必要
第4回 運動はいくつで始めても遅くない!

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原田泳幸(はらだ えいこう)さん
ベネッセホールディングス 会長兼社長
原田泳幸(はらだ えいこう)さん 1948年長崎県生まれ。東海大学工学部卒業。72年エンジニアとして日本NCRに入社。その後、80年横河・ヒューレット・パッカード(現日本HP)、83年シュルンベルジェグループ取締役を経て、90年アップルコンピュータジャパン(現アップルジャパン)へ移り、97年社長就任。2004年同社社長から日本マクドナルド社長へ転身。05年会長を兼任。2014年よりベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長に。