ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
現役銀行マンでクラブチャンピオンになる
エージシュートに挑戦している人は、意外なことに定年後にゴルフを本格的に始めた人が多い。その要因は、サラリーマン時代はゴルフに行きたくてもいけなかった。そうした募る思いを定年後も持ち続けてエージシュート挑戦の原動力にしているのだろう。
その一方、現役世代に県レベル以上のアマチュア大会などの常連だった人にはエージシューターが少ない。若い頃に頑張りすぎて肘や腰を痛め、エージシュートに挑戦する年齢に達する頃には体を壊してしまっている場合が多いのだ。
今回、ご紹介する人は、現役世代にはクラブチャンピオンに輝いたうえに、定年後はエージシュートを300回以上達成して、今なお記録更新中というアマチュアゴルファーとしての理想的なゴルフライフを送っている。
矢嶋正一さん。1929年(昭和4年)6月生まれの86歳で、川越市ゴルフ協会会長も務める凄いシニアゴルファーだ。矢嶋さんが息の長いゴルファーであり続けるには、どんな上達法や健康法があったのだろうか。
まずは矢嶋さんのこれまでの主な戦績をご紹介しよう。自身が所属するホームコースの東松山CC(埼玉県)では、クラブチャンピオンに4回輝いている。
1984年(昭59年)55歳
1985年(同60年)56歳
1986年(同61年)57歳
1993年(平 5年)64歳
矢嶋さんは元埼玉銀行(現りそな銀行)の銀行マンだった。定年前に埼玉県信用組合協会に出向し、専務理事を経て完全にリタイアしたのが63歳のとき。ということは、東松山CCでクラブチャンピオンに輝いた55~57歳の3年間は間違いなく現役サラリーマンとして活躍していた時期と重なる。
クラブチャンピオンがリスペクトされる理由
クラブチャンピオンになるには予選のストロークプレーでベスト32に入り、決勝ラウンドに入ってからは毎週2ラウンドのマッチプレーが待っていて、ほぼ1カ月に渡る長丁場を戦い抜かなければならない。クラブチャンピオンが、そのゴルフ場のメンバー全員からリスペクトされるのは、単にゴルフの技術だけでなく、それだけのハードな試合を勝ち抜く強靭な精神力と肉体の持ち主であるからなのだが、それをサラリーマンの現役時代にやってのけたというのは驚愕すべきことなのである。
「いやあ、現役銀行マンといっても、55歳のときにはもう信用組合協会に出向していましたから、比較的、時間は自由の利く身になっていたんです」(矢嶋さん)
とはいえ、20代、30代、40代の若手メンバーが体力に任せて挑んでくるクラブ選手権で3年連続を含む4回もクラブチャンピオンに輝くことがいかに大変な偉業か、ゴルフをやっている人なら誰も異論を差し挟まないだろう。