日経グッデイ

現役エージシューターの「山あり、谷あり、ゴルフあり!」

クラブに仕事をさせれば、82歳でも飛距離は伸びる!

第2回…「ボールをよく見る」「ミスを抑えるクラブ選択」で70台を維持【赤﨑俊美さん】

 高橋健二=ノンフィクションライター

ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。

ゴルフを続けながら自然治癒を待つ決断

 1933年(昭和8年)生まれで、今年82歳になる赤﨑俊美さんは、今から5年前に右肩の腱板を部分断裂し、その後、リハビリで通っていたスポーツジムで昨年11月に左肩の腱板を完全断裂した(前回記事:『82歳エージシューター、肩の手術をやめた理由は「前よりスコアがいいから」』)。専門医からは「手術以外に治す方法はない」と宣告された。

 しかし、手術をすればリハビリに3カ月かかり、その間は当然、ゴルフはできなくなる。80歳を過ぎてから、生活の一部であるゴルフを中断すれば、その間に足腰の衰えは想像以上になるかもしれない。78歳で腱板を半断裂したときに、2週間ほどのブランクでも体力の衰えを実感した赤﨑さんはあえて手術を受けることを辞退し、ゴルフを続けながら自然治癒を待つ決断をした。

左右均等の重心配分でバランスのよい赤﨑さんのアドレス。今も腕は肩よりも上に挙げられないが、スイングに必要な体を回転させながら腕を使う方法でゴルフを続ける。

 無論、赤﨑さんが下した決断については、賛否両論があるだろう。

 医療技術が進んだいま、様々な疾患やケガは手術で治るようになった。とはいえ、病気やけがは完治したとしても、闘病の末に足腰が弱ってますます体力低下を進めるといった事例が少なくないこともまた事実であろう。

 数々のエージシューターたちと接してきた中で筆者が感じたことは、その世代にとって大事なのは「残された時間に自分は何をしたいか」を見極め、決断していくことであるかもしれない。赤﨑さんの選択は、まさに歳を重ねた後の一つの生き方を示しているような気がする。

ボールをよく見る心がけがミスを減らした

 前述したように赤﨑さんは左肩の腱板断裂後にドライバーの飛距離がガクンと落ちたという。昨年11月にけがをする前は、平均飛距離が200ヤードを超えていたのに、その後は170~180ヤードになったのである。

 「昔の自慢をしても仕方ないけど、60歳になってからも250ヤードは飛ばしていたんです。ホームコースの祁答院GCには、岡本綾子プロがドライバーで飛ばした地点に表示板が立ててあったのですが、その表示板をよくオーバーしていたんですよ」(赤﨑さん)

 むろん、80歳を過ぎてからも200ヤード以上飛ばしていた赤﨑さんは、年齢からすれば十分すぎるくらい飛ばし屋だったわけだが、ゴルファーにとって飛距離が20ヤードも落ちるとスコアメイクはかなり厳しくなる。ところが、一旦落ちた飛距離がまた復活して、いまは腱板断裂前の飛距離に戻ってきたという。

 クラブやスイングを変えたわけではない。にもかかわらず、再び飛距離が戻ってきたのには、何か秘訣があるのだろうか?

 「それが私にもよくわからないのです。腱板を断裂してから腕に力が入らなくなった。だから、ボールを打ちたくても打てなくて、否応なしにクラブに仕事をさせないといけない。そのためにはクラブをちゃんとヒットしないといけないと思って、ボールをよく見て打つようになった。するとミスが少なくなって真っすぐ飛ぶようになった。思い当たることといえば、それくらいしかないんですよ」(赤﨑さん)

 こう分析した後で、赤﨑さんは苦笑しながらもう一言付け加えた。

 「それとね、ドライバーは飛ばなくなったけれども、代わりに3番ウッドが飛ぶようになったのです。ドライバーの飛距離は190~200ヤードだけど、3番ウッドでも今はドライバーと同じ200ヤードくらい飛ぶようになりました」(赤﨑さん)

 ここに赤﨑さんの飛ばしのヒントがありそうだ。

ヘッドの重みを使って飛距離アップ

 クラブ設計家に話を聞くと、ドライバーのヘッド重量は193~195gであるのに対し、3番ウッドは212~214gに設計されているという。つまり、ヘッド重量だけを比べると3番ウッドの方が重い分、ヘッドを効かせれば(クラブに仕事をさせれば)ドライバーよりも飛ぶ。

 ボールをよく見て打つという赤﨑さんの意識は、ヘッドの重みを上手く使いながら芯でボールを捕える、つまり「インパクト率」が上がったことで「クラブに仕事をさせる」という理想的なスイングへと変化したものだと推測できる。いつも思い切りクラブを振り回し、自分で打ちにいってミスを繰り返しているゴルファーには、スイング改造のヒントになるのではないだろうか。

 ここで赤﨑さんの愛用のクラブを紹介しておこう。

  • ドライバー―――――――――スリクソンXXIOプライム
  • 3W、5W、7W――――――ブリジストン ファイズ
  • 9W、11W―――――――――マルマンシャトルU4
  • アイアン6~9I―――――ミズノJPS
  • ウエッジPW、FW、SW――ミズノJPS
  • パター―――――――――――メーカー名不明
     35年前にもらったコンペ商品(glint more9102の刻印あり)。

 「ドライバーもアイアンも、これまで何セットも買い替えましたが、パターだけは何度か買い替えても、このパターに戻ってくる。コンペの賞品でもらった無名のものですが、握ったときにすごくしっくりくるんですよ」(赤﨑さん)

クラブセッティングはウッド主体だ。これはミスショットになったときの飛距離がアイアンよりも稼げるとの狙いがある。
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 赤﨑さんは前記の14本を使って、82歳になったいまも平均スコア77~78で回ってくる。目が覚めるほど素晴らしいボールを打つ飛ばし屋でもなければ、プロが舌を巻くようなショートゲームの達人でもない。ごく普通のシニアゴルファーなのに、いつの間にかパーでホールアウトしている。そんな感じだ。それを18ホール積み上げていくように淡々とラウンドしていく。

保険をかけるクラブ選択でミスショットのダメージを最小に

 こうした赤﨑さんのスコアメイクの秘密は、どこにあるのだろうか。

 まず、クラブセッティングからもわかるように、アイアンよりもフェアウエーウッド類を多用するのが赤﨑さんのラウンドを支えていることは間違いなさそうだ。

 「そうですね。基本的に6番アイアンや7番アイアンよりも9番ウッドや11番ウッドを使います。同じ飛距離が出るウッドとアイアンを比較すると、例えば6番アイアンなどでミスをすると全然ボールが飛ばない。でも9番ウッドなら当たりが悪くても150ヤードぐらいは飛んでくれる。ミスのダメージが少ないと思いますね」(赤﨑さん)

 要するに、ゴルフはいつもナイスショットができるわけではないので、ミスしたときにダメージを最小限に抑えられるよう保険をかけて臨む。保険をかけるうえで大切なのは、そのクラブを使ってミスが出ないかどうかをチェックする作業だ。つまり、ボールのライをしっかり観察する。

 前述した赤﨑さんの言葉にあった「クラブに仕事をさせるために、ボールをよく見て打つようになった」という、“よく見る”作業には、アドレスに入る前にボールのライをチェックすることも含まれているという。

 「ライの見極めはすごくていねいにやります。それ以外は特に考えていることはありません。強いて言えば、今日1日ゴルフができることに喜びを感じながら、どんなミスショットをしても腐らず、自分に怒らない。一緒に回ってくれる人に感謝の気持ちで接する。そんなことがメンタルの安定を保っている気がします」(赤﨑さん)

 一病息災、という言葉がある。無病息災ではなく、1つくらい病気を抱えているほうが無理をせずに自分を大事にし、周囲も大事にするから、結果的に元気いっぱいの人よりも健康で長生きする(息災)という意味だ。赤﨑さんの話を聞いて、そんな言葉を思い出したのだった。

*)次回(11月19日公開)は、『今もゴルフは週3回、「クラブハウスが我が家の居間で、フェアウェイが庭です」』をお届けします。ぜひ、ご覧ください。