「もちろん、一番のコツというか、大切なことは『エージシュートを出すぞ』という目的と挑戦意欲を持つことです。その2つが自分を変えるのだと思います。挑戦しようと思えば、日常の生活習慣や食生活も変わるし、練習方法も自分で創意工夫をするようになる。私の同年代のゴルファーはほとんどゴルフを辞めたし、そうでない人はエージシュートを狙うチャレンジ精神を持たなくなっている。チャレンジ精神を持たなければ永遠にエージシュートは出せません」(和田さん)
和田さん自身、エージシュートという目標があったから、86歳まで健康で生き生きとゴルフを楽しんでこられたのだと述懐する。
「ここまできたら90歳になってもゴルフをしていたいというのが目標で、今から90歳になったときにどんなゴルファーになるのかを考えていますよ。100を切るというのが今の目標ですね」(和田さん)
「俺は会社のためにゴルフに行っているんだ」
ところで、2ページ目で紹介したコメントで和田さんが言う「大事な試合」とは、果たしてどんな試合なのか。和田さんがメンバーになっているコースで開催される「グランドシニアチャンピオン」を決める大会なのか、それとも地方アマを選出するトーナメント選手権なのか。改めて質問を向けてみると、即座に、筆者が笑い転げてしまった答えがかえってきたのだ。
「そりゃあもちろん、年に何度か開催される業界や取引銀行が主催するコンペです。特に銀行のコンペは大事でね。そこでベスグロを取って優勝すれば、たとえ86歳であっても、ベスグロやエージシュートをバンバン出している元気な社長がいる会社からの融資の申し込みならば、銀行側も断るわけにはいかないでしょう(笑)。だから従業員には、『俺が元気なうちは借金ができる。俺は会社のためにゴルフをやっているんだ』と言っています」(和田さん)
ゴルフも、趣味も、自分のやりたいこと、好きなことに、常に全力で向き合ってきたエージシューターの和田孝弌さん。ゴルフを通じて垣間見た彼の人生は、70年前に若くして散った機関学校の同期生たちと来世で再会を果たしたとき、彼らの分まで生き抜いたという“冥土の土産話”を、たくさん聞かせてやりたいとの思いで走り回っているようにも感じた。
<了>