次に、太鼓。諏訪太鼓の流れを汲む田楽太鼓を継承し、「信濃でいらんぼう音舞の会」を作った。地元の野沢南高校の高校生らを率いて長野県代表として、全国高等学校総合文化祭に4回の出場を果たしている。
さらに妻、禎子さん(73歳)の活動が、和田さんの趣味の世界をいっそう広げてくれている。日本舞踊の藤間流の名取(名取名・藤間勢波)でもある妻も、和田さんと同様、野沢南高校に働きかけて舞踊クラブを創部し、指導に駆け付けるほど。東京で舞踊教室を運営し、3年に一度のペースで「踊りの会」を主宰する。そのプロデュースを和田さんが一手に引き受けているという。
「妻の『踊りの会』の開催日程が決まると、その1年前からプロデュースしていくのです。だから忙しいなんてものじゃない。『退屈』という言葉を私は知りません(笑)」(和田さん)
かつてトヨタ自動車の大番頭で、ときの政府の要請を受けて国鉄再建の任を担って総裁になった故・石田退三は「元気な老後を送るためにはインドアとアウトドアの2つの趣味を持て」と言ったそうだが、和田さんはゴルフを含めて、3つ以上の趣味を持っている。加えて、本業である“社長業”はまだ現役バリバリだ。
「インドアとアウトドアの2つの趣味を…というのはその通りだと思いますが、インドアの趣味が麻雀のような遊びではダメ。芸術的な趣味でないと“色気”はやはり出ないと思っています。芸術的、文化的な趣味を持つことは、世代を超えた話題にもなる。若い人たちとの交流も容易になると思っているのです」(和田さん)
芸術的なものに触れることが精神面の成長を促す
和田さん自身、もともとスポーツは観戦することも、実践することも大好きだというが、それ以上に文化的な活動は大事にしているそうだ。美食への和田さんなりのこだわりも、その一環といえる。
「精神の成長は、文化的なもの、芸術的なものに触れて初めて促されると思っているのです。体は年齢とともに衰える。しかし、文化的、芸術的なことに触れて精神面を磨き続ければ、肉体的な衰えを補えるのではないかと考えているのです」(和田さん)
日本人のプロゴルファーが世界の舞台で今ひとつ活躍できないのは、若い頃に技術の習得に走るあまり、精神的な広さ・奥深さを育てるための機会が足りず、精神力が劣ることも一因ではないかと和田さんは考えている。
「例えば、メジャーで9勝を挙げたグランドスラマーのゲーリー・プレーヤーを見ると、哲学者みたいな雰囲気を漂わせています。偉大なゴルファーたちは肉体と精神のコントロールに長けている。そういうものは宗教も含めて、幼い頃から文化や芸術に親しむところから育まれるように思うんですね」(和田さん)
ゴルフを極めんとするならば、最後の最後に求められるのは「精神力」だといわれるが、和田さんのそれを支えているのは、ゴルフ以外の趣味に拠るところが大きいのではないだろうか。
ゴルフはもちろん、和ごとの嗜みや、グルメ、ファッションといった趣味も、86歳にして「今が青春真っ盛り!」と言わんばかりの毎日を謳歌している和田さん。次回は、現在のゴルフライフをより詳しく紹介しよう。
*)次回(10月22日公開)は、『銀行の融資を引き出す86歳社長のエージシュート』をお届けします。ぜひ、ご覧ください。