軽井沢でゴルフをしたことがある人ならばご存じかもしれないが、晴山ゴルフ場はリゾート客向けに営業している距離5842ヤード、パー70のやや短いコースだ。つまりパー72のコースより2打少ないためスコアを作りやすく、エージシュートも出しやすい。そのうえ絶好の練習環境にもなっている。各ホールは高い松の木でセパレートされていてドライバーの正確性が求められ、かつグリーンも傾斜のきつい砲台が多く、アプローチショットの精度が求められる。距離は短いが簡単にパーが取れるコースでは決してない。
『ゴルフは飛距離だけじゃないぞ』というところを見せたい
和田さんのエージシュート34回はすべて競技委員のいる本コースで達成されたもので、本拠地である晴山ゴルフ場をはじめとするプライベートラウンドはカウントしていない。距離は短くてもグリーンを外したときの寄せワンが難しい晴山ゴルフ場で、「ドライバーはフェアウェイをキープ」「第2打目以降は無理にパーオンを狙わない」という和田流スコアメイク術を磨いてきたに違いない。
本連載の第1回目に登場した大久保和男さん(宮城県仙台市・85歳)のケースを思い出していただきたい(参照記事:「企業戦士を襲った病魔とエージシュートとの出合い」)。大久保さんのホームコースも宮城県仙台市郊外の「富谷パブリックゴルフ場」だった。距離が4910ヤード・パー70と、一般のコースよりかなり短いが、大久保さんは「短いコースでエージシュートを出し慣れていたからこそ、6000ヤード以上の本コースでも楽にエージシュートが出せた」と話していた。
そんな話を和田さんに差し向けると、次のような言葉が返ってきた。
「それはあるかもしれないけど、もう1つ。ぜひ本編で紹介してほしいのですが、私は本コースを若い人たちとラウンドするときは、いつもみんなと同じレギュラーティーから打っているんです。70歳以上はゴールドティーじゃなきゃ嫌だという人もいるけど、そんなわがままは一度も言ったことがない。ドライバーの飛距離で負けても『ゴルフは飛距離だけじゃないぞ』というところを見せたいのです。またそんな気持ちでやってこそゴルフの真の面白さが味わえると思っているんですね」(和田さん)
いかにも和田さんらしい気概の伝わってくるコメントである。
これまでこの連載で登場してきたエージシューターたちとはまた違ったゴルフとの向き合い方。それはゴルフ以外にも様々に情熱を向けることで、元気と若々しさを保ち続けている秘訣にもなっていた。次回はそれを紹介しよう。
*)次回(10月21日公開)は、『「人間ドック異常値なし」を支える86歳エージシューターの食と趣味』をお届けします。ぜひ、ご覧ください。