ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
ドローボールで200ヤードを飛ばす「逆けさ斬り打法」
和田孝弌さんは、86歳になった今でもドライバーで200ヤード超の飛距離を誇る。そのスイングを見たゴルフ専門誌『書斎のゴルフ』(日本経済新聞出版社)の本條強編集長が、「逆けさ斬り打法」と命名したほど独特だ。
まず、アドレスした後にバックスイングはインサイドに引きはじめ、低い位置でヘッドをいったん止める。次に、そこからトップまで引き上げる。いわゆる「2段モーション」だ(写真参照)。そして、トップからダウンスイングに入り、インパクト後はヘッドをかちあげるように左サイドに振っていく。俗にいう「けさ斬り」は右上から左下に向けて「アウトサイドイン」に振り下ろすが、和田さんのスイング軌道はその真逆、右下のインサイドから左上に向けて振り上げていく「インサイドアウト」だ。「逆けさ斬り打法」とはまさに言いえて妙だ。
この打法によって生まれるドロー回転によってランを稼ぐ。これが、86歳となった今でも200ヤード超の飛距離をキープする要因になっていることは言うまでもない。
和田さんはどういう経緯でこの打法を編み出したのだろうか。
「ゴルフを覚えたばかりの頃にスイングを見てもらっていた大歳プロとラウンドしていたときのことです。プロはドライバーがまったく飛ばなくて、私がパーシモンのクラブで220ヤード飛ばしていたときに、160ヤードくらいのところに落としていたんです。ところがボールのあるところまで歩いて行くと、ほぼ同じ位置に2個並んでいる。要するにランで距離を稼げるドローボールを打っていたわけです」(和田さん)
そのときの印象が和田さんの記憶の隅に残っていた。
「当時は別に真似しようとも思わなかった。私の理想は陳清波プロのスイングで、それを参考にしていたときには十分に飛んでいた。ところが70歳になって急に飛ばなくなった。やはり筋力が衰えたからなのでしょう」(和田さん)
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