ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
試合会場に粋なテンガロンハット姿でさっそうと現れた
ゴルフはいくつになってもオシャレを楽しめるスポーツだ。シニアゴルファーが赤や黄色のウエアを身にまとっているのが、コースではすごくサマになる。真っ青な空と緑のじゅうたんが広がる大きな舞台装置で楽しむ遊びゆえに、カラフルなウエアがプレーヤーを若返らせてくれるのだろう。3年前に山梨県のゴルフ場において、筆者が発案して事務局長を務めたエージシュート大会を開催したとき、粋なテンガロンハットとオシャレなデザイナーズパンツ姿で颯爽(さっそう)と現れたシニアゴルファーがいた。今回、ご登場いただく和田孝弌(わだこういち)さん(86歳)である。
和田さんがファッションにこだわるのには、彼ならではの理由がある。
「人間は色気がなくなったらおしまいです。人間としての内面的なゆとりが色気や艶っぽさにつながり、それがファッションになって現れると思っているんですね。だから私のウエアは歳を取るにつれてどんどん派手になっていく。このズボンも買って帰ったら、家内が『それ、女ものじゃないの?』といったんですよ」(和田さん)
豪快に笑う和田さんのインタビューを進めていくうちに、エージシュートにかける思いに加えて、彼ならではのゴルフや健康に対する考え、さらには美意識といった「人間として生き方」のような世界観に筆者は引き込まれていった。
故・中村寅吉プロとの出会い、「お前、何をやってるんだ?」
和田さんは、長野県佐久市で銅合金や軽合金などの素材を鋳造から精密機械加工・組立、さらには試作、量産までの一貫製造会社を営む。現在86歳、今も現役バリバリの経営者である。
ゴルフを始めたのは1956年、32歳のときだった。ちょうどその前年の1955年、東京都が世田谷区の砧緑地(現在の砧公園)に都営の「砧ゴルフ場」をオープンさせた。そこが若き日の和田さんのホームグラウンドとなったのである。
- 次ページ
- 寅さんの教えを受けたことも