日経グッデイ

現役エージシューターの「山あり、谷あり、ゴルフあり!」

55歳の決意、次の目標は「47都道府県ゴルフ場制覇」

第4回…「毎日累計1トンの負荷をダンベルでかけてます」【菅丈夫さん】

 高橋健二=ノンフィクションライター

ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。

エージシュート達成の前に掲げた、もう1つの目標

 当たり前のことだが、70代、80代と歳を重ねていくと、それまで簡単にできていた生活行動であっても思うようにできなくなる。ゴルフでいえば、ドライバーの飛距離が落ち、アプローチやパットの距離感が悪くなり、思うようなスコアメイクができなくなるのだ。ましてや若い頃、トップアマだった人たちは「できて当たり前」と思っているのだから、意のままにできなくなったショックは一般的なアマチュアゴルファー以上であろう。

腕の力こぶは今もプリプリ! その秘密は、2キロと3キロのダンベルを使い、それぞれ100回、腕を上下されせる筋トレにある。
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 加齢に伴い、本人のやる気をそぎ、前向きにゴルフに向かう気持ちを萎えさせていく。若くしてシングルプレーヤーになり、トップアマとしてゴルフを楽しんできた人たちが思うようにエージシュートを達成できないのは、先に挙げたような微妙な心理面の影響があるに違いない。

 ところが、菅丈夫さん(77歳)は、エージシュートをまだ2回しか達成していないのに、さほど気にする様子がない。それどころか悠然として余裕すら感じられる。

 「体はどこも悪いところがないし、来年になれば年齢も78歳になる。そうなると、もう少しエージシュートは出やすくなるのかなと、今から楽しみにしているんです」(菅さん)

 70歳代でエージシュートを頻繁に達成することは、ゴルフがそもそもパー72で回る力量を求められる点からも難しい。こうした事情を菅さんは見越していたのか、エージシュートを達成する目標とはまた別に、もう1つ目標を掲げ、それを果たすことを楽しみにゴルフを続けていたのである。

 47都道府県のゴルフ場制覇。

 55歳のときに思い立って始めた、もう1つの目標だった。

「残った28府県を訪れ、全国のゴルフ場を制覇しよう」

 エージショートを目指すゴルファーたちには、ラウンドした日付、コース、その特徴、同伴競技者名、スコア、その日の調子や気づいたことなどを細かく記録して残す “メモ魔”の性癖があるが、菅さんも例外ではなかった。35歳のときからラウンドしたコースをすべて記録に取り、コースオリジナルのボールマークも収集していた。

「あるとき、ボールマークを整理して日本地図の上に都道府県別に貼り付けていたら、それまでに19都道府県でラウンドしていることが分かったのです。仕事で出張するたびにラウンドしていたら、いつの間にかそれだけの数になっていた。それならば残った28府県のゴルフ場を訪れ、全国47都道府県のゴルフ場を制覇してやろうじゃないかと思い立ったのです」(菅さん)

47都道府県で回ったゴルフ場のボールマークで作った日本地図。今も年間20コースのペースで新しいコースが増えている。
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 新たな目標を掲げて以来、足掛け18年。ついに達成の日がやってきた。

 2011年4月8日、菅さんが74歳の誕生日を迎えた6日後に47都道府県でのラウンドを達成。実に629コース目での制覇だった。それを記念して、菅さんは『47の足跡』という自作の記念冊子を作った。その1ページ目に「丈夫のゴルフ史」というタイトルをつけ、次のような文章を寄せている。


「35歳にしてゴルフに目覚め、酒、タバコを止めて1年間365日雨の日も、風の日も、平日は会社の帰りに3時間、土日祝日は終日練習をし、シングルプレーヤーの仲間入りができました。それから42年間多くの方々の協力を得、日本全国47都道府県のゴルフ場、629コースの芝に足跡を残させていただきました。

 都道府県制覇目標ツアー46番目のプレーコース奈良県、法隆寺CC、奈良万葉CCには、三瓶、山下、石塚様方のご同行をお願いし 最終47番目のコース京都府は市内が一望できる京都国際カンツリークラブへは細山田ご夫妻、小土橋ご夫妻にご同行をお願いし、40年間74歳にして念願の47都道府県制覇の夢を達成することができました(中略)。

 大勢のご同行下さった方々、プレーさせていただいたゴルフ場と、一番協力してくれた家内(千恵子)にはと特に感謝しております・・・頭が上がりません」(菅丈夫著『47の足跡』より原文ママ)

「3K」+「目標」が肉体と精神の両面を支える

47都道府県のゴルフ場を制覇した記念に作った自作の冊子『JOHBU・SUGAのゴルフ史 47の足跡』。お薦めのコース、想い出のコースなどのほか、各年での平均スコアが収載されている。
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 この連載でも何度か触れてきたが、エージシュートを果たした人、これから目指そうとしている人には、共通するあるキーワードがある。まず「3K」が旺盛なこと。好奇心、向上心、行動力。この3Kの旺盛さは、前2回に渡ってご紹介してきた菅さんの練習法をはじめ、それを継続してきた前向きさをお読み頂ければ理解できるだろう。

 次に、エージシューターたちは「目標作り」が上手い。菅さんが掲げた47都道府県のゴルフ場制覇は、誰もが思いつきそうだが、実行に移す人はなかなかいない。前述したように“メモ魔”でもあることによって、自分の足跡を振り返ることができ、そこから新たな目標を思いつく。すると好奇心や向上心が旺盛だから、またすぐに行動に移す…という好循環が生まれていく。

 しかし、忘れてならないのは、こうした新たな目標設定が、年々衰える体力や気力の維持向上の原動力になることだ。

 菅さんをはじめとするシニアゴルファーたちが生き生きとしているのは、新たな目標設定によって肉体面と精神面の健康を高めているからに違いない。

3キロと2キロのダンベルを使い腕の上げ下げ200回!

 77歳になる菅さんの体格は、身長166㎝、体重69㎏。食べ物の好き嫌いはなく、米食中心で何でも食べる。酒、タバコはゴルフを始めた35歳のときに一切やめた。普段の運動は毎日のダンベル体操を主にして、ストレッチ、自転車漕ぎ、階段の天井部分に渡したバーにぶら下がる運動などを思いついたときにやるそうだ。

同じシングルプレーヤーの仲間たちとともに、ゴルフに励んでいた55歳の頃の菅さん。
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 「栄養管理については、食事とは別にサプリメントを摂取しています。『すっぽんとしじみ』『ニンニク卵黄』『セサミンン』といったサプリを毎日1錠ずつ飲んでいます。一方の運動は、3キロと2キロのダンベルを使い、両手に持って腕の上げ下げをする筋トレを各々100回ずつやっています。毎日、累計すると1トンの負荷をかけていることになりますね。運動は自宅だけではなく、電車に乗ったときもつり革にぶら下がったりしてトレーニングにしています」(菅さん)

 こうした食事、運動の両面からの体管理は、目標を達成するために日々の積み重ねが大切であることを象徴していると言えよう。77歳になった今でもドライバーの飛距離は230ヤードを誇っている。

80代に向けて3つの新たな目標を掲げる

 そんな菅さんに、今後の目標を聞いてみた。

 「そうですね。3つ目標があります。まずは、47都道府県のゴルフ場を制覇した後に目標としたのが、ある雑誌に紹介されていた『プレーしてよかった日本のゴルフ場ベスト100』を全踏破することです。これまでに72コースを制覇していますから、残り28コースでプレーすれば達成できます。次に、80歳を過ぎても元気にゴルフができる体を維持し続けること。最後に、エージシュートは最低でも年に2~3回は達成することですね」(菅さん)

 1つの目標をクリアすると、すぐ次の目標を見つけて挑戦をする。菅さんのゴルフに対する取り組み方は、たとえゴルフを嗜まないシニア世代にとっても、いつまでも元気ではつらつとした人生を送るためのよいロールモデルになるはずだ。

<了>