ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
エージシュート達成の前に掲げた、もう1つの目標
当たり前のことだが、70代、80代と歳を重ねていくと、それまで簡単にできていた生活行動であっても思うようにできなくなる。ゴルフでいえば、ドライバーの飛距離が落ち、アプローチやパットの距離感が悪くなり、思うようなスコアメイクができなくなるのだ。ましてや若い頃、トップアマだった人たちは「できて当たり前」と思っているのだから、意のままにできなくなったショックは一般的なアマチュアゴルファー以上であろう。
加齢に伴い、本人のやる気をそぎ、前向きにゴルフに向かう気持ちを萎えさせていく。若くしてシングルプレーヤーになり、トップアマとしてゴルフを楽しんできた人たちが思うようにエージシュートを達成できないのは、先に挙げたような微妙な心理面の影響があるに違いない。
ところが、菅丈夫さん(77歳)は、エージシュートをまだ2回しか達成していないのに、さほど気にする様子がない。それどころか悠然として余裕すら感じられる。
「体はどこも悪いところがないし、来年になれば年齢も78歳になる。そうなると、もう少しエージシュートは出やすくなるのかなと、今から楽しみにしているんです」(菅さん)
70歳代でエージシュートを頻繁に達成することは、ゴルフがそもそもパー72で回る力量を求められる点からも難しい。こうした事情を菅さんは見越していたのか、エージシュートを達成する目標とはまた別に、もう1つ目標を掲げ、それを果たすことを楽しみにゴルフを続けていたのである。
47都道府県のゴルフ場制覇。
55歳のときに思い立って始めた、もう1つの目標だった。