加えて営業マンならではの不規則な生活や、独り身で栄養のバランスも考えない食事、さらに仕事上のストレスもあったのだろう。胃潰瘍や大腸炎などの消化器系疾患を抱え、40歳当時についたあだ名が「三日月さん」。それくらいに痩せていたそうだ。
「結婚した私の仕事は、主人を太らせることでした」
植杉さんが52歳のときに結婚した千枝子さんは、友人の紹介で最初に植杉さんと出会ったとき、「このままでは病気の看病ばかりになるのでは」と心配したほどだった。
「結婚した私の最初の仕事は、主人を太らせることでした。といっても急に体重を増やすと危険なので、徐々に増えるように計画を立てたうえ、食の細い主人が無理しないよう、1日の食事を6回に分けて食べてもらいました。通常の朝、昼、夕食のほかに、朝10時と午後3時、そして就寝前の23時に軽い食事を加えました。寝る前は胃にもたれないようバナナと牛乳にするなど、栄養のバランスも考え、10年かけて10㎏体重を増やす作戦を続けたのです」(千枝子さん)
おかげで植杉さんが60歳になった頃には、体重が60㎏になり、現在もその状態を維持している。
植杉さんの30年にわたる年間150ラウンド以上という超人的なゴルフ生活は、妻・千枝子さんによる栄養バランスと規則正しい食事時間を考慮した「肉体改造プロジェクト」からスタートしたのだった。
健康の秘訣は1日6食、30品目を取る
「主人は、生野菜は固いといって食べないので、セロリやキャベツの芯、大根の葉っぱまでミキサーでジュースにするなどして、6つの基礎食品群(*)からバランスよく1日30品目の食品を毎日摂るようにしています」(千枝子さん)。さらに、紙パックの1L入り牛乳を3日で4本飲む(夫婦で)。朝食、夕食、そして就寝前の1日3回、コップ1杯ずつ飲む。特に寝る前の牛乳は骨粗しょう症予防のため。骨は夜、寝ている間に代謝し、再生しているというのは、科学的にも証明されている。
元看護師で調理師の資格を持つ千枝子さんの目配りは、結婚後、食生活から体調管理にまで及び、文字通り“かゆいところに手の届く”甲斐甲斐しさ。今も植杉さんのエージシュートの記録更新を支えている。
「味付けは薄味にしてありますが、全部を薄くするとまずくなるので、味にメリハリをつけ、魚や肉は濃い味で、野菜類はドレッシングか素材の味を楽しめるように調理しています。塩はほとんど使わず、酢や味噌、醤油、佃煮などで味付けをします。漬け物類は保存するために塩を濃くしてあるので、食べるときに塩抜きをして、カボスやレモン、酢、ショウガなどで味をつけて、極力薄味にして食べています」(千枝子さん)
厚生労働省が作成した6つの食品群。すべての群から1日30品以上を選んで食べることを推奨している。1群:魚、肉、卵、大豆、大豆製品。2群:牛乳、乳製品、海藻、小魚。3群:緑黄色野菜。4群:淡色野菜。5群: 穀類、イモ類、砂糖。6群:油脂類、脂肪の多い食品。
