ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
リハビリ目的で選んだコースは、手引きカートのアメリカンスタイル
サラリーマン時代はゴルフをやりたくても仕事に追われて思うようにできなかったのが、定年を機に本腰を入れて取り組み、68歳で心臓のバイパス手術を受け、ゴルフ場通いを始めた大久保和男さん(前回記事:「企業戦士を襲った病魔とエージシュートとの出合い」)。医師に「歩くのが一番のリハビリだ」と言われ、週2日はコースに通うことを決めた。そこで選んだのが仙台市郊外にある「富谷パブリックコース」だった。
プレーヤーは各自、手引きのカートにバッグを積み、歩いてラウンドするアメリカンスタイルのゴルフ場というのも、大久保さん(85)の「リハビリの目的」にはうってつけだった。
同コースの設定は、4910ヤードのパー70。距離はないが、緩やかなアップダウンのある戦略的なレイアウトで、仙台では中高年の体力維持や生活習慣病の予防にも最適なゴルフ場として知られているそうだ。加えて、70歳以上は1ラウンドのプレーフィーが3550円。カート代と昼食代を合わせても5000円でお釣りのくる安さも、既に年金暮らしの大久保さんにとってはありがたかった。
転勤族が土地に根付くには「庶務課の仕事」が不可欠
このコースを選んだことで、大久保さんがゴルフを続ける上での新たな幸運がもたらされることになった。生涯のゴルフ仲間となる3人、佐藤克己さん(85)、翁市郎さん(83)、土屋庄寿さん(84)と出会ったのだ。いずれも会社は違うが現役時代はみな転勤族で、定年後に仙台に終の住処(すみか)を構えていた。
翁さんが言う。「転勤族には友人ができにくいという共通の課題がある。ゴルフ場で3人と出会ってから会社のOB会よりも親密にお付き合いさせてもらっているんですよ」
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