ゴルフを嗜む者であれば、生涯に一度は経験したいことが3つあるとされる。「ホールインワン」「アルバトロス」、そして「エージシュート」だ。偶然などによってもたらされることが多いホールインワンなどとは違い、自分の年齢よりも少ない数字のスコアで回るエージシュートは、真の腕前だとされる勲章の1つ。そして何より、70代、80代、90代…でゴルフができる「元気の証」でもある。ゴルフを始めた経緯も、その人生も様々。現役エージシューターから学ぶ「体のこと」「ゴルフの極意」をお届けする。
仕事では自己犠牲も厭わない企業戦士だった!
18ホールを自分の年齢以下のスコアで回るゴルフのエージシュートは、歳をとっても元気にゴルフを続けたいと考える人たちが、生涯に1度は達成したいと夢見る目標の1つだ。そのエージシュートを、心臓手術後の目標にしてリハビリに励み、すでに350回も達成しているシニアゴルファーがいる。宮城県仙台市に住む大久保和男さん(85)である。
昭和5年生まれの大久保さん(85)は、いわば日本経済が右肩上がりで伸びてゆく高度成長期の真っただ中でサラリーマン生活を送った。家庭よりも職場、家族よりも仕事を優先する生き方に何の疑問も差し挟まなかった世代である。一生懸命やれば必ず報われると信じて、ときには自己を犠牲にして仕事にまい進した。勤務先は大手の損保会社。俗にいう「転勤族」で、札幌を皮切りに東京、大阪、徳島、岩手とほぼ全国を股にして営業の最前線で働き、最後は東北6県を束ねる仙台支店長でサラリーマン生活を終えた。まさに仕事一筋の企業戦士だったといえよう。
「ゴルフは好きでね、やりたくて仕方なかったけど仕事が忙しくて月に1~2回、接待ゴルフでコースに出るのが関の山。定年になったら毎日やってやるゾと思っていましたね」
歯科医院のポスターをヒントにエージシュートの目標を立てる
そんな老後の夢が、ある日を境に暗転する。55歳のとき狭心症による強度の発作を起こしたのだ。
狭心症は突如として心臓をえぐり取られるような激痛に襲われ、その痛みは短時間で嘘のように治まるといった症状を繰り返すことが多い。大久保さんは薬で発作を抑えながら仕事を続けた。だが、すでに支店長の要職にあったため、夜の接待なども欠かすわけにはいかず、症状はますます悪化した。そこで主治医の勧めもあり、半年間、休職して治療に専念することにした。
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- 治療はクスリを飲んで安静にしているだけ