日経グッデイ

深い呼吸はカラダを変える

呼吸法は体の内側を動かし、心を落ち着かせる最高の健康法

「腹式」と「胸式」、二つの呼吸法を実践してみよう

代謝が低く太りやすい、肩や首の凝りがひどい、顔のたるみが同年代の人より目立つ、イライラ、うつうつした気分になりやすい─。そんな悩みの背景に、「浅い呼吸」があるかもしれない。普段の「浅い呼吸」を「深い呼吸」へと導き、体と心を整えるのに役立つのが「呼吸法」。ストレスが多く、運動不足の現代人には、必要不可欠な健康法です。

「呼吸法」は、“心身を調整する健康法”

 無意識に行う普段の「呼吸」に対して、意識的に行うのが「呼吸法」。「呼吸」が、酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する“生きるためのもの”としたら、「呼吸法」は、“心身を調整する健康法”だ。

 雪谷大塚クリニックの雨宮隆太院長は、「呼吸法は、体幹部にある体の内側の筋肉をしっかり動かす“運動”。武道の基本として、体の動きとともに呼吸法が取り入れられるのは、体の内側と外側を連動させ、体幹部の動かし方を会得するため」と語る。だから、体の動きを組み合わせた呼吸法に、ダイエット効果が期待できるのは当然だという。

 さらに、呼吸法は若々しい姿勢を保つのにも役立つ。「姿勢を支える抗重力筋の多くは運動時に呼吸を補助する筋肉。中でも背すじを立てるのに重要な脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)は、呼吸をサポートする。呼吸法を行うことで、脊柱起立筋が刺激され、姿勢が良くなる」(雨宮院長)。

 また、呼吸法の最大のメリットは、私たちの内臓や血管の働きをコントロールする自律神経の調整をすること。そのため、便秘や冷えといった不調の改善にも効果的なのだ。

呼吸法の5大効果

 古今東西さまざまな呼吸法があるが、初心者でもできる腹式呼吸や胸式呼吸でも、実に多くの効果が期待できる。

1.心が落ち着く

 これは、呼吸法を行っている多くの人が実感する効果として挙げている。呼吸と脳は非常に密接で、リラックスに関わる脳内物質「セロトニン」の効果ともいわれている。

2.若々しい姿勢になる

 脊柱起立筋は、呼吸に関わる筋肉であり、姿勢を保つ筋肉でもある。そのため、呼吸法でしっかり呼吸に関わる筋肉を使うと、いい姿勢を保ちやすくなる。

3.肩こり、首こり改善

 呼吸には、肩や首の筋肉も働いている。呼吸法を行うと、肩や首の筋肉もしっかりストレッチされる。また、呼吸法には血流を良くする作用も期待できる。

4.代謝アップ・ダイエット

 呼吸とともに、お腹を大きく伸び縮みさせ、呼吸に関わる筋肉に強く作用して筋トレ効果を得ることも。代謝も上がるロングブレスダイエットでよく知られるようになった効果だ。

5.自律神経を整える

 呼吸法の一番のメリットがこれ。長くゆっくり吐くことで、自律神経が整う。自律神経は内臓や血管の働きをコントロールしているため、腸の調子が良くなったり、冷えも改善する。

 東邦大学の有田秀穂名誉教授は、「腹式呼吸を5分以上繰り返すと、心をすっきりさせる脳内の神経伝達物質、セロトニンが増える」と話す。そのため、ストレスを受け流せるようになるという。「セロトニンは、姿勢を保つ抗重力筋を刺激する。抗重力筋は顔にもあり、ヨガや気功など呼吸法を行っている人の顔が若々しく引き締まって見えるのは、そのためだ」(有田さん)。これほど多彩な効果がある呼吸法は、一生に役立つ最高の健康法だ。そこで早速、「腹式呼吸」と「胸式呼吸」という二つの方法を実践してみよう。

まずは呼吸法の基本「腹式呼吸」を習慣にしよう!

 さまざまな呼吸法の中でも、最も一般的な腹式呼吸。吐くときにお腹をへこませ、吸うときにゆるめることで、横隔膜を普段の呼吸より、大きく上下させる。できるだけゆっくりと繰り返してみよう。

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《吸う》お腹をゆるめながら息を鼻から吸う

 鼻からゆっくりと息を吸う。このとき、お腹は楽にゆるめていく。お腹がゆったりと膨らむのを意識しよう。手をお腹にのせるとやりやすい。


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《吐く》口から細く息を吐きながらお腹を凹ませる

 腹式呼吸は、「吐く」ことがポイント。お腹をぐーっとへこませながら、口からゆっくりと息を吐く。その際、お腹の中央だけがへこむのではなく「お腹が筒状に縮まることを意識するといい」(コンディショニングトレーナーの有吉良志恵さん)。


「胸式呼吸」も試してみよう!

 腹式呼吸はお腹に意識を向けるが、胸式呼吸は、肋骨と胸の筋肉を動かして胸郭を大きく膨らませることを意識する呼吸法。加齢や運動不足によって、胸や背骨の柔軟性が失われるため猫背になりやすいが、胸式呼吸は「特に猫背を防ぐ」と雨宮院長。腹式呼吸と併せて行おう。

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 次回は、胸と背中の「呼吸筋ストレッチ」を紹介します。


(写真:岡﨑健志/図版:トキア企画(今牧良治、野村憲司)/モデル:下枝 愛)

雨宮隆太さん
雪谷大塚クリニック(東京都大田区) 院長
雨宮隆太さん 医学博士。日本呼吸器学会専門医・指導医。40代で「楊名時太極拳」に出合い、帯津良一、長允也両氏に調和道呼吸法の指導を受ける。著書に『はじめての呼吸法』(ベースボール・マガジン社)など。
有田秀穂さん
東邦大学 名誉教授 セロトニンDojo(東京都台東区) 代表
有田秀穂さん 脳生理学者、医師。東京大学医学部卒業。東海大学医学部内科で臨床、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究を行い、東邦大学医学部教授を経て、現職。著書に『医者が教える正しい呼吸法』(かんき出版)など多数。
有吉良志恵さん
コンディショニングトレーナー
陸上競技選手として活躍後、運動指導者としての30年以上の経験を生かして独自のメソッドを確率。現役アスリートから高齢者まで幅広く運動・生活改善アドバイスを行う。著書に『ブレスダイエット 呼吸でやせる!』、『奇跡の呼吸力 ― 心身よみがえるトレーニング』(ちくま新書)など。

(出典:日経ヘルス2013年7月号)