押川勝太郎「『先生にお任せします』と言わないで」
がん治療をうまく継続させるための7つの習慣
押川勝太郎=宮崎善仁会病院 消化器内科・腫瘍内科医師
がんの病状は個人差が大きく、治療法が複数あり、さらに患者一人ひとりの価値観も異なります。がんと診断された直後から、患者は自分の病気を理解し、さまざまな情報を取捨選択する人生が始まります。自身も肺がん患者である日経BP社の山岡鉄也が、がんと向き合った人々に話を聞き、後悔しない人生を送るためのヒントを紹介します。
がん治療が始まると、つらかったり、苦しかったり、いろいろうまくいかないことが出てきます。今回は、消化器内科・腫瘍内科医師であり、宮崎県内のがん患者が集まる宮崎がん患者共同勉強会の理事長を務める押川勝太郎さんに、治療をうまく続けていくためのヒントを聞きました。押川さんはがん治療を続けていくための“7つの習慣”を提唱しています。
「『お任せ』患者の治療成績は概して良くない」
がん治療を続けるためには、患者さんと医師の齟齬(そご)を極力なくすことが大切だという押川さんの意見には、強く同感します。でも、実際には、「先生、決めてください。お任せします」と下駄を預けてしまう患者さんもいらっしゃるのではないですか。

押川 「お任せします」という考え方は、昔のように治療の選択肢がなく、患者さんにも知識や情報がない時代の名残だと思います。医療者側に頼ることしかなかったわけですから。
しかし、現代は治療法の選択肢が増え、一方で患者さんのライフスタイルや要望も多様になってきました。こんな時代に、医師に「お任せします」と言ってしまうのは、患者さんが自ら努力を放棄することと同じです。実際、「先生にすべてお任せします」と言う患者さんは治療成績があまりよくないんですよ。
それはなぜですか。
押川 医師が患者さんにとって一番良い、一番負担が軽い治療法を選んでくれると期待する半面、他人任せになって、病気や治療について知ろう・学ぼう、医師と積極的にコミュニケートしようという意欲が起こらなくなってしまうからです。
がん治療においては、医師と患者さんとのコミュニケーションが大切(参考記事:1回目インタビュー「治療のつらさは遠慮せずに伝えてほしい」)です。医者任せにしてしまう患者さんは、副作用も主治医に伝えきれず、我慢する傾向が強い。
嘔吐や脱毛といった副作用が辛くなってくると、病気について深く学んでいないだけに、だんだん不満も溜まってくる。そして最後に、「こんなはずじゃなかった!」と、治療を止めてしまう。結果的に、治療成績も悪くなりがちなのです。
「がんになったことは人生の一部に過ぎない」
押川さんは共同勉強会で、「がん治療を継続させるための7つの習慣」を伝えていらっしゃいますね。教えて頂けますか。
押川 「がんになってしまったこと」は人生のすべてではなく、あくまでも一部に過ぎません。いままでの生活を継続し、がんになったことも含めて人生を楽しまないと、がんを治療する意味がなくなってしまうと思います。共同勉強会では、ビジネス書や自己啓発本を参考にしながら考えた7つのコツを紹介しています。