押川勝太郎「治療のつらさは遠慮せずに伝えてほしい」
医師と患者の関係を深める患者勉強会とは?
押川勝太郎=宮崎善仁会病院 消化器内科・腫瘍内科医師
「がん治療は医師と患者さんの協働作業で進めていくもの」
治療中の医師とのコミュニケーションがいかに大切か、ということについては、私も痛感しています。
押川 これまでは、科学的根拠に基づいて医師が治療方針を決めてきました。が、いまは患者さんから「自分にとって、何が一番重要か」「優先したいことは何か」を医師に伝えたうえで、治療の継続のために協働していかなければなりません。医師と患者さんが一緒になって、治療法を選択したり、従来のやり方が継続困難な状況に陥った時に方向転換をすることがそれに当たります。
患者さん自身がその治療に価値を見出して、意欲を保てるか否かが、治療を継続させる上でカギとなるからです。このことは「VBM(=Value Based Medicine:患者の価値に基づく医療)」という新しい言葉で表現されるようにもなりました。
このような協働作業によって、医師と患者さんの関係性が良くなり、お互いの思い違いを減らすことが、ベストな治療につながります。
がん治療は医師と患者さんの協働作業で進めていくものですが、そのためのコミュニケーションには時間がかかるものです。医師と患者の間には、有している専門知識に関して大きな差がありますが、さらに、両者にそれぞれ違った思い込みがあったり、誤解していることがあったりすると、なかなか、うまくいきません。
共同勉強会では、そのような溝を埋めるための知識や情報を伝えて、医師と患者間のコミュニケーションをサポートしています。
「『明るすぎてちょっとイメージが違う』と言われることも」
私も先日、共同勉強会に参加させてもらいましたが、病状が厳しい方でも元気で明るく笑っていらしたことが印象的でした。

押川 初めて参加された方から「明るすぎて、思っていたのよりちょっとイメージが違う」とよく言われます。終末期の患者さんも、車椅子の患者さんも、仲間に会いたくていらっしゃいます。毎回20~30人程度集まり、累計では300人ぐらい参加されました。参加者は制限していません。看護師、薬剤師、心理士などのほかに、がん患者さんではないけれど、興味がある方も時々参加しています。
共同勉強会から派生して、患者さんが自主的に遊ぶ集まりも開いています。会に来なくなった方を悲しむようなことはせず、みんな、明日に向かって楽しんでいます。患者さんががんになったことを忘れるほど、元気な時間をできるだけ多く作るようにしています。
(写真:清水真帆呂)
押川さんは、患者さんも医師も、がん治療中に起こるお互いの状況が想像しきれていない現状を踏まえ、「双方のコミュニケーションが大切」と話します。共同勉強会がそういった溝を埋める役割を果たしているそうです。次回は、共同勉強会でも好評の、「がんになっても前向きに生きるための押川流7つの習慣」について話を聞きます。
宮崎善仁会病院 消化器内科・腫瘍内科医師

日経BP 広告局プロデューサー
医療ジャーナリスト
