がんに負けない患者力
林和彦「緩和ケアとは、がんであることを忘れられる時間をつくること」
がんについてネット検索する時間があれば、家族は患者と過ごしてほしい
2015/6/10 林 和彦=東京女子医科大学 がんセンター長
【対談を終えて】
昨今のがん医療や緩和ケアの発展には、目覚しいものがあります。私が肺がん治療の傍ら、がんと共存してこの仕事を続けることができるのも、新しい治療や緩和ケア手法が開発されたおかげで本当にありがたく思っています。
一方、今でも世間では根強いがん医療不信があります。がん患者仲間からも、医療者の対応にネガティブな話を聞くことがしばしばあります。このギャップはなぜ生じるのでしょうか。医療者サイドで変わってほしいこと、患者サイドで変えたほうがいいことなどを洗い出し、このギャップを埋めていきたいと強く考えています。林さんの「診察時にはプロブレム・リストを持っていくといいい」「緩和ケアで生きる活力を取り戻せる」など、私自身も深く頷ける話でした。
林 和彦(はやし かずひこ)さん
東京女子医科大学 がんセンター長
1986年千葉大学医学部卒、東京女子医科大学消化器外科入局。94年米国南カルフォルニア大学留学、96年にはAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO) Merit Award受賞。2010年同大学化学療法・緩和ケア科教授、14年から現職 。日本外科学会認定登録医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本臨床腫瘍学会指導医、がん薬物療法専門医、日本緩和医療学会暫定指導医、日本がん治療認定医機構 暫定教育医・認定医など。
聞き手:山岡鉄也
日経BP 広告局プロデューサー
2010年、肺がん(ステージIV)と診断される。入院や通院での治療の後、復職。2012年4月より国立がん研究センターの患者・市民パネルメンバー。自らの経験を生かして、がんと就労が両立できる社会を目指して、「がんと共に生きる」「がんと共に働く」をスローガンにその環境整備をライフワークにしている。
インタビューまとめ:福原麻希
医療ジャーナリスト
新聞・雑誌・書籍などで医療や健康、介護分野の記事を多数執筆。著書『がん闘病とコメディカル』(講談社、2007年)『チーム医療を成功させる10カ条 ―現場に学ぶチームメンバーの心得』(中山書店、2013年)などがある。