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がんに負けない患者力

林和彦「がんに名医はいない。でも良医はいる」

ガイドラインが普及した今どきの病院選び、医師選び

 林 和彦=東京女子医科大学 がんセンター長

「そもそもブラックジャックのような“名医”はいません」

なるほど。どのがん診療連携拠点病院でも治療のレベルが同じだとしたら、何を指標に病院を選べば良いのでしょう?

東京女子医大/林和彦先生

 「この人なら自分の体を任せられる」と思える医師がいることが大切だと思います。ガイドラインの普及によってがん医療は均てん化されたので、差が出てくるのは、医師個人の人となりやコミュニケーションスキルです。要するに、「人間として信頼できるか」。自分にとってベストの先生が見つかれば、それが一番です。

 特に、マスコミは特定の医師を名医に仕立て上げることが好きですが、そもそも、「名医」なんていませんよ。「どんな病気も治してしまう、ブラックジャック(*3)のような医療技術的にも人格的にも優れた、神様のような医師と出会うこと」、これこそ、“医療を受ける理想の姿”だと思いがちですが、外科医としてがん治療に携わってきた私からすると、どんなに研鑽してもそんな名医には到底なれません。

 でも「良医」にはなれると思います。そして、良医は全国にたくさんいます。

*3 ブラックジャックとは、手塚治虫の漫画作品の主人公である、無免許の天才外科医のニックネーム。神業的な技術でどんな難手術も成功させる。

「『私に任せなさい』は良医とはいえない」

林先生にとって「良医」とはどんな医師ですか?

東京女子医大/林和彦先生

 「良医」には、必要不可欠な要素が2点あると思います。

 まず、友達を選ぶのと同じで、「人として、どこまで信頼できるか」。「この人に、自分の命を預けられる」と素直に感じられるかどうか、が重要です。

 もう一つは、患者さんによって異なる、優先順位や価値観をくみ取り、マネジメントできることです。

 例えば、「1日も長く生きることを優先したい」と答える人もいれば、「毎日、自分らしい生活ができること」「お金がかからないこと」「治療の場所が変わらないこと」と言う人もいます。そんな患者の希望を聞き、情報や知識、解決策を提示できる力を持っていることが大切だと思います。

 これらの2点を満たす医師が「良医」と呼べると私は思います。

 技量に圧倒的な差があった時代は、医師の人格のほか、患者さんのニーズや価値観に対するマネジメント力は、治療の良し悪しと関係ないとされてきましたが、今はそうした要素がとても大事になってきています。

 あと、力関係でいえば、医師は知識や経験が豊富なため、患者さんと比べたら圧倒的に強い。そこを見越して、「私の言う通りにすればいい」「私に任せなさい」という医師は、そもそも患者さんの話に耳を傾ける意思が感じられないので、避けた方がいいと思います。

 また、テレビへの出演、本の上梓、講演や学会での登壇…このようなことばかりに興味を持っている医師も「良医」とは言えません。マネジメントに必要な知識を増やしたり、技術を磨いたりする時間が足りませんからね。

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