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がんに負けない患者力

田部井淳子「山での遭難に比べたら、がんの治療の方が恵まれている」

登山で培った、困難を受け止める力

 田部井淳子=登山家

「今日も生きていられる。そのことに感謝」

私も同じです。がんになってから、生きることに前向きになりました。毎朝、すべてのものに感謝するように心掛けています。田部井さんは、学生のころから前向きな性格なんですか?

田部井 いえいえ、大学生のころは福島の田舎から出てきて言葉がなまっているから、人と話すことが好きではありませんでした。テレビもない時代だったので、東京の人の言葉が高貴に思えて…。結構、いつも落ち込んでいる、暗いタイプでしたよ。

 その後、山に登るようになってから、性格が変わりました。初めての登山は奥多摩へ行ったとき。臼を引いているおばちゃん、鎌や鍬を持ったおじちゃんがいて。「なんだ、東京も自分が生まれた(福島県)三春町と変わらないじゃないか」と、ふと心が軽くなったんです。

田部井淳子さん 富士山頂上にて。夫と息子と。
2013年7月富士山頂上にて。夫と息子と。(タベイ企画提供)
[画像のクリックで拡大表示]

 おばちゃんに道を聞いたら、「帰りに寄ってがんしょー」と声をかけられて。「自分の言葉が通じている!」とうれしかった。

 それから本を買って、毎週「次はどこに登ろうか」とあれこれ考えるようになって。東京の日常生活では無口ですが、山に行ったらしゃべれる。そのうちに、みなさんと話せるようになりました。次の計画を立てるのは本当に楽しい。これこそ、生きがいと感じました。

 私にとって、山の力は、昔もがんになったときも、とても大きいものでした。

(写真:清水真帆呂)

田部井さんはがんになって、今を大切にする、周りに感謝するという気持ちが強くなったばかりでなく、自分自身の体の声に耳を傾け、自分を大切にするようになったといいます。次回(「病気になっても、病人にはなりたくない」)は、がんを経験して生活がどう変わったかについてインタビューします。

田部井淳子(たべい じゅんこ)さん
登山家
田部井淳子(たべい じゅんこ) 1939年福島県生まれ。62年昭和女子大学英米文学科を卒業し、社会人の山岳会に入会し登山活動に力を注ぐ。69年「女子だけで海外遠征を」を合言葉に女子登攀クラブを設立。75年、エベレスト日本女子登山隊副隊長兼登攀隊長として、女性世界初のエベレスト登頂に成功。92年、女性で世界初の7大陸最高峰登頂。現在までに73カ国の最高峰・最高地点を登頂。今年はエベレスト登頂40周年になる。
2012年から、毎年夏休みに、「東北の高校生の富士登山~登ろう日本一の富士山へ~」プロジェクトを開催。日本一の山から、次なる東北を支える「勇気」と「元気」をもらおうと願いを込める。昨年も86人の東北の高校生が登頂した。1人でも多くの東北の高校生を招待できるよう、ホームページでは寄付の協力を募っている。(主催:株式会社山と渓谷社、日本山岳遺産基金/田部井淳子)http://sangakuisan.yamakei.co.jp/tohoku_fujisan/
聞き手:山岡鉄也
日経BP 広告局プロデューサー
2010年、肺がん(ステージIV)と診断される。入院や通院での治療の後、復職。2012年4月より国立がん研究センターの患者・市民パネルメンバー。自らの経験を生かして、がんと就労が両立できる社会を目指して、「がんと共に生きる」「がんと共に働く」をスローガンにその環境整備をライフワークにしている。
インタビューまとめ:福原麻希
医療ジャーナリスト
新聞・雑誌・書籍などで医療や健康、介護分野の記事を多数執筆。著書『がん闘病とコメディカル』(講談社、2007年)『チーム医療を成功させる10カ条 ―現場に学ぶチームメンバーの心得』(中山書店、2013年)などがある。

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