日経グッデイ

「企業対抗駅伝 2015 東京」参戦! 連動企画

動画を活用! 理想のランニングフォームでケガと痛みを防ぐ

第7回 読者のランナーの悩みに、アディダスランニングアドバイザーが回答

読者ランナーのほとんどが抱えている「フォーム」の悩み

 前回の「トレーニング法」(「ランニング力をアップさせるトレーニング方法」)に続いて、アディダスランニングアドバイザーの安喰太郎(あぐい・たろう)さんがランナーの疑問や悩みに答えるシリーズ。第2回は「フォーム」の悩みを改善する方法についてご紹介しましょう。

 来る5月16日に開催される「企業対抗駅伝 2015 東京」を目指し、我が「日経Goodayチーム」が始動しました(「読者ランナー集結!企業対抗駅伝「日経Goodayチーム」が始動」)が、実は参加した読者ランナーたちからは、ランニングのフォームに関する悩みや質問が多く寄せられていました。

「日経Gooday」チームに参加する読者ランナーたちが集ったランニングセミナーでのひとコマ。安喰コーチによる個人指導が行われた。
[画像のクリックで拡大表示]

 走るときのフォームというのは、人それぞれに違うものです。これは骨格や筋肉の強弱、さらに長年の生活習慣による体使いの癖などに起因するわけですが、バランスが悪いフォームのままで走り続けていると、無駄な体力を消耗して、楽に長く走れません。それどころか、膝や腰などに負担がかかり、ケガをする原因にもなります。

スマホの動画を使い「全身」と「脚部」を撮り比べる

 ここで読者ランナーたちから寄せられた悩みをいくつか取り上げてみましょう。そして、それらを改善するためには、自分のフォームのどこをチェックすればいいのか。早速、安喰コーチに聞いてみました。

Q.1

自分のフォームを撮影してもらった写真を見ると、歩幅が狭く、アゴも上がって体が棒のようになって走っています。後ろ足での蹴り出しがうまくできず、スピードが出ないのですが、フォームを改善すれば治るでしょうか?

(白川育男さん 50歳 ランニング歴:5カ月)


フォームが前のめりになっている気がします。

(市川圭一さん 34歳 ランニング歴:5カ月)


ドタドタした走りになってしまいます。脚が正しく上がっていないのでしょうか?

(吉田裕子さん 48歳 ランニング歴:5カ月年)


A.1

 自分が走っている姿というのは、やはり自分自身では確認できないものです。しかも、ランニングの教則本や専門誌などに出ているような連続写真を参考にして走っているつもりでも、なかなかその通りにはできないものです。本来であれば、ランニングの専門コーチに指導してもらえればいいのですが、一般のランナーたちはこうした機会がなかなかないのも実情でしょう。

 そこで、私はスマホを使った動画撮影を活用することをお勧めしています。友人や家族、ランニング仲間に頼んで、自分が走っている姿を撮影してもらうのです。このときのポイントは、「全身」と「脚の運び方」の2パターンを撮ることです。特に後者は腰から下の「脚の動き」にフォーカスしてもらう。全身の走る姿を見た後に、脚部の動きと比較することで、自分のフォームの長所と短所、さらに修正するべき癖などが見つけられるようになります。

 全身を撮った動画を再生するときには、大きく3つのポイントに注意して自分のフォームを観察してみましょう。まずは、「腰が高い位置に保たれているかどうか」。もしも、腰が落ちたフォームで走っていたら、骨盤がかなり前傾または後傾しすぎている可能性があります。こうなると体を前に進ませるために余計な力が必要になり、効率が悪く、疲れやすい走り方になります。骨盤は少しだけ前傾させるぐらいに立てて、腰を落とさずに走るよう心がけてください。

 次は、「猫背になっていないか」をチェックしてみましょう。背中が丸まったままで走ると、前回の記事でもアドバイスしたように「肩甲骨を動かして腕を振る」ことが不足してしまいます。上半身で生み出した力を走力につなげられないために、こちらも非効率的な走りになります。また、先に触れた腰の位置も高く保てなくなります。背すじを伸ばし、上半身を柔らかく保つことを心がけるように修正していきましょう。

ラン友と動画を撮り合いながら、お互いのフォームをチェックしあってみよう。
[画像のクリックで拡大表示]

 そして最後に、体の「上下動」に目を向けてみましょう。読者ランナーの吉田裕子さんの質問にあった「ドタドタした走り」というのは、恐らく体の「上下動」が大きくなっていることだと推測されます。動画で全身の動きをチェックするときには、「頭の位置がほぼ変わらないままで走れているかどうか」に着目してみます。

 もしも、大きく跳ね上がるように走っていたら要注意です。着地したときの衝撃で体への負担が大きくなるため、特に足首、膝、腰などを痛めやすくなります。それを防ぐためには、上半身をぶらさずに頭の位置を一定に保つことが肝心。先でも触れましたが、両肩の端を結んだ水平の線と体幹の軸で作る「T」の字を崩さないように、普段の練習から意識して走り続けましょう。フォームが修正されてくると、無駄な動きがなくなり、上下動の少ないスムーズな走りに変わっていきますよ。




 こうした動画を使ったチェックは、実際に安喰コーチが主催する会員制ランニングチーム「Harriers(ハリアーズ)」でもお薦めしている方法だといいます。安喰コーチの話を総合すると、「きれいなTの字を保ったフォームで走れること」が理想的なようです。市川圭一さん(34歳)の悩みにあった「フォームが前のめりになっている気がする」という悩みも、これで解消できるはずです。

「脚」と「骨盤」が連動しているかどうかをチェック

 全身を撮影した動画で上半身の改善ポイントをチェックしたら、次のステップでは、「脚の運び方」にフォーカスした映像でフォームの分析をしていきましょう。ここではどんな点をチェックすればいいのでしょうか。

Q.2

つま先がどうしても外を向いてしまいます。直す方法はありますか?

(奥村嘉博さん 42歳 ランニング歴:2年5カ月)


ランニングをしていると足腰に痛みが出ます。特にふくらはぎに疲れが残り、腕の疲労も感じます。

(西内宮佳江さん 43歳 ランニング歴:2年6カ月)


A.2

 ランニングでは「股関節」を使って走ることが大切だと前回でもお伝えしましたが、一般ランナーを指導していると「太もも」「ふくらはぎ」「足裏」といった部位に意識を向けてしまいがちです。つまり、「脚だけ」で走ってしまう人が多いのです。「脚の筋肉だけを使っている」とも言い換えられるかもしれません。

 そうした走り方が癖づいていると、股関節から脚を十分に動かせず、歩幅が小さくなり、結果的にちょこちょこしたフォームになってしまいます。たしかに「ピッチ走法」という歩幅を小さくして走るテクニックはありますが、実はアスリートや一般の上級ランナーがそれで走っていたとしても、決して「脚だけ」で走っているわけではありません。

股関節から脚がスムーズに動かせているかをチェックする。脚だけしか動いていなければ、改善に取り組もう。
[画像のクリックで拡大表示]

 動画で脚の運び方をチェックするときには、脚と一緒に「骨盤」が左右交互に前へ動いているかに着目してみましょう。

 もしも、脚だけしか動いていなければ、肘をしっかり後方に向けて引く「腕振り」を意識しましょう。腕振りを大きくすることで、骨盤と脚部とをつなぐ腸腰筋が使えるようになり、結果的に脚をスムーズに引き上げられるようになります。さらに、足裏が地面に「着地」してから後ろに「蹴り出す」ときにかけて、股関節に体重をしっかりかけられるようになれば、理想的なフォームに近づきます。

 この時、無理に脚を前に振り出すのではなく、股関節から脚を振りだすようにして、自然な歩幅で着地できればいいと思います。着地点が体から離れすぎると、地面にかかとを着く位置が定まらず、それに連動して足先が内や外に向きがちになります。こうなると、先ほども指摘した体の「上下動」も大きくなってしまうのです。

 また、後ろに向けて脚を「蹴り出す」ときは、意識して強くする必要はありません。腕振りの力を「骨盤から股関節を通して脚に伝える」ようにしていけば、自分の体形に合ったスムーズな脚運びと歩幅、蹴り出しに整ってきます。


理想のフォームに近づくと「疲れ」「痛み」が減る

 無理や無駄のない理想的なフォームを身につけておくことは、これから長くランニングを続けるにあたって「ケガの防止にもなる」と安喰コーチはいいます。たしかに、読者ランナーたちから寄せられた質問には、フォームの悩みに関連して腰や膝などの痛み、すりむき傷…といった、何かしらのケガや痛みを抱えながら走り続けているケースが多いようです。

Q.3

スピードを上げて走ると足の親指と土踏まずの間が摩擦で赤くなり、皮が剥けて、治るまで2週間以上かかってしまいます。フォームが悪いのでしょうか?

(森本 歓さん 44歳 ランニング歴:3年)


疲れてくると重心が右に傾く(自分でも意識はある)、長時間走ると腰痛がひどくなる。

(大神田和志さん 42歳 ランニング歴:20年)


A.3

 ここまで、自分のフォームを長所と短所をチェックするには、「腰の位置」「猫背」「上下動」に注目することをお伝えしました。またそれらを改善するためのアドバイスとして、「肩と背骨のラインでTの字を保つ」「骨盤を安定させて股関節から脚を動かす」「着地から蹴り出しは力まず自然に」という3つに取り組めば、体全体を使えるバランスの良い走りができるようになります。理想的なフォームに近づくにつれて、走る姿も自然と美しくなります。

安喰コーチから「T」の字をキープするようにアドバイスを受ける、読者ランナーの奥村さん。
[画像のクリックで拡大表示]

 できたら、私のアドバイスを実践する前後で動画を撮り、「Before」「After」を見比べながら、修正ポイントをどんどんと洗い出してください。無理なく走れるようになってくると、ランニングはもっと楽に長く走れるようになっていくはずです。

 もしそれでも、脚に痛みが出たり、足裏などに「すりむき傷」や「マメ」などが頻繁にできるならば、それはシューズそのものやインソールなどが体に合っていない可能性があります。そのときは、思い切ってシューズを買い替えたり、自分の足型に合ったインソールに取り換えるなどして対策を施してみましょう。




 ランニングは誰にでもできる、単純な動きの繰り返しだけに、そのフォームにはクセが染みついているもの。今回ご紹介した安喰コーチの改善方法を意識して、楽しく走れるようになっていきましょう!

 次回は、「ランニングと栄養管理」についてご紹介します。ぜひご覧ください。


(取材・文:松尾直俊、撮影:村田わかな、撮影協力:アディダスジャパン)

安喰太郎(あぐい たろう)さん
Harriers代表 アディダス ランニングアドバイザー
安喰太郎さん 1974年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、イギリスに渡り英国陸上競技連盟コーチの資格を取得。帰国後の2005年に会員制ランニングチーム「Harriers(ハリアーズ)」を設立し、代表を務める。36歳になる年にフルマラソンで自己ベストを出すなど、ランナーとしても活躍中。日本体育協会公認陸上競技指導員。