日経グッデイ

「企業対抗駅伝 2015 東京」参戦! 連動企画

ランニング力をアップさせるトレーニング方法

第6回 読者ランナーの疑問と悩みに、アディダスランニングアドバイザーが答える

変化をつけた練習で走力アップ

 前回の記事(「読者ランナー集結!企業対抗駅伝『日経Goodayチーム』が始動」)でもご紹介した通り、「企業対抗駅伝 2015 東京」に向けて日経Goodayチームが本格的に活動を開始しました。5月16日の本大会を目指して、メンバーたちはそれぞれが練習に励んでいます。

 そこで今回から3回に渡って、読者ランナーから寄せられたランニングに関する疑問や悩みについて、アディダスランニングアドバイザーの安喰太郎(あぐい たろう)コーチに解決策を伝授してもらいます。一般ランナーにとっても、楽しく走るための参考になるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

5月16日に開催される「企業対抗駅伝2015東京大会」に向けて、4月16日に行われた日経Goodayチームのランニングセミナー。
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 第1回目は、ランニング力をアップさせる「トレーニング方法」について。読者ランナーたちから寄せられた悩みや相談は、主に「筋トレ」や「体の柔軟性」、そして「スピードや持久力を高める方法」といったものに分けられます。これらの課題は、多くの一般ランナーも抱えているのではないでしょうか。

筋トレを補完的に取り入れて、走力の土台を強化する

Q.1

ランニング力を上げるためには、筋トレは必要でしょうか?

(北見 淳さん 53歳 ランニング歴:2年9カ月)


走ること以外に筋トレなどを取り入れたほうがいいのでしょうか? できたら、半年から1年程度で走力を上げたいと思っているのですが。

(吉田裕子さん 48歳 ランニング歴:5カ月)




A.1

 私自身、現役ランナーとしてタイムを狙っていたときもそうでしたが、ランナーが走力を高めようとすると「走ること」ばかりに終始してしまいがちです。もちろん、それだけでも走るために必要な筋肉は強くなっていきますが、より効果を上げるならば、やはり筋トレは取り入れたほうがいいと思います。特に加齢に伴って、「何だか体力がなくなってきたな」と感じているようであれば、ランニングに必要な筋力の維持または向上のためにも、筋トレを取り入れることをお勧めします。

 ただし、マシンやウエイトを使って、大きな負荷をかける筋トレをする必要はありません。簡単にできるトレーニングとして「スクワット」や「ランジ」など、自分の体重を負荷にしてできるものを補完的に行えばいいでしょう。

股関節は「前後」「左右」「回旋」という3つの可動域を意識する。ランジなどのメソッドも効果的だ。
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 「スクワット」を行うときには、背中を丸めないように注意して10回を1セットとして3セットぐらい行うのが標準的です。さらに、両足を前後に開き上体を床に向けて沈める「ランジ」では、前に置いた脚の膝がつま先よりも前に出ないように体を上下に動かすのがポイント。こちらも片脚10回を1セットにして、左右の脚を3セットずつ行うのがいいでしょう。どちらの筋トレも、勢いをつけて反復させるのではく、5~8秒ぐらいかけてゆっくり上下動させることが大切です。走る前のウォーミングアップとして取り入れてもいいでしょう。

 脚部の筋トレに関していえば、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」という筋肉を鍛えてしまいがちですが、ランニングで必要なのはむしろ脚部の裏側にある筋肉群です。太ももの裏側にある「ハムストリングス」やふくらはぎの「下腿三頭筋(かたいさんとうきん)」といった大きな筋肉を使って走ることが大切なのです。

「体の柔軟性を高めておくこと」を心がける

 しかし、筋トレを取り入れる前に、多くのランナーに心がけておいてもらいたい大切なことがあると安喰コーチは言います。それが、「体の柔軟性を高めておくこと」です。

 読者ランナーたちの悩みで必ずといっていいほど聞かれたのが、「ケガ」や「体の痛み」に関することでした。これは「初級者」や「上級者」といったレベルには関係がなく、さらに40代以降のランナーになると「走り出すとすぐにひざが痛くなる」「ランニング後、脚の側面に痛みが出る」「股関節が痛い」といった悩みを抱えている人がほとんどです。

 さて、そうした悩みを解決するためには、どのような対策を取ればいいのでしょうか。安喰コーチの回答を参考にしてみましょう。

Q.2

年齢とともに体が固くなってきています。故障しないように柔軟性を高める方法や部位について教えてほしい。

(大神田和志さん 42歳 ランニング歴:20年)


走っていると、殿部から太ももふくらはぎにかけての外側が張りやすく、痛くなります。また、歩幅も狭いと言われるのですが、より効率的に走れる方法がありますか?

(油井祐孝さん 38歳 ランニング歴:6年11カ月)





A.2

 走力アップに加えて、ケガ防止という観点からも、体の柔軟性はとても重要です。特に「肩甲骨」と「股関節」の可動域を高めることに重点を置いたストレッチや運動で、普段から筋肉をほぐしておくようにしましょう。

 意外だと思われるランナーがいるかもしれませんが、ランニングの効率を上げるためには「腕振り」、つまり、腕を振ることが大切なのです。ポイントは、前に大きく振るのではなく、後ろに向けて振るのです。このとき、肩甲骨を動かす意識で、肘を後ろに大きく引くとうまく腕を振り続けられます。そのためには、肩甲骨まわりの柔軟性を高め、可動動を広げておくことが必要になってくるのです。普段からストレッチなどで胸を開くようにして、肩甲骨同士を背骨に向けて寄せる習慣をつけておくといいでしょう。

 一方、股関節は脚を動かすためにとても大切な関節です。例えば、ジョギングくらいの軽い運動でも、足底部には体重の3倍くらいの負担がかかるといわれています。負荷がかかるのは「足首」「ひざ」「股関節」といった3つの関節。その中でも、上半身と下半身のつなぎ役にあたる股関節は、地面から突き上げる衝撃と上半身の重さによる負担を吸収する役割を果たします。そのため、股関節の柔軟性を高めておくことは、ケガを防ぐためにも有効なのです。

肩甲骨を背中の中心に向けて寄せる力は、ランニングで欠かせない「腕振り」の動作を生み出す。
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脚部への負担を軽減させ、効率よく走り続けるには、股関節の柔軟性を高める必要がある。
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 股関節の柔軟性を高めるためには、前後に大きく動かせる可動域を広げるのはもちろんですが、左右の開脚や旋回(回す)といった動きも加えて、ストレッチをしておくといいでしょう。

 例えば、先に紹介した「ランジ」は、脚部の強化を図るとともに、股関節を前後に動かす柔軟性を高めることにもつながります。また、左右に動かす可動域を広げるには、床に座って足裏同士を合わせたまま、開脚前屈をするストレッチがいいでしょう。さらに、回旋(回す)させる力を上げるには、片足だけで立って、もう一方の脚を内と外に大きく回すストレッチなどが効果的です。

スピードと持久力をバランス良く鍛える

 「スピードをアップさせる方法を知りたい」「持久力を上げたい」という要望も、多くのランナーが抱えている悩みのようです。いつも1人でランニングに励んでいると、どうしても我流の練習方法になってしまいがち。そこで安喰コーチが提案する「ビルドアップ走」「ペース走」という2つの練習法を取り入れてみてはどうでしょうか。前者は「脚筋力」、後者は「心肺機能」をアップさせる狙いがあります。

Q.3

スピードを上げるための練習と持久力をアップするための練習を教えてください。

(桂川直也さん 41歳 ランニング歴:9年)


平均スピードを上げる方法と最後の5kmでスピードアップする方法は、どのような練習を取り入れればいいのでしょうか?

(金子英一さん 52歳 ランニング歴:3年10カ月)





A.3
走る距離を4つに区切り、少しずつスピードを上げていくビルトアップ走は、スピードアップを目的として練習法。
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 スピードをつけるには「ビルドアップ走」という練習を行うのが効果的です。ビルドアップとは「鍛え上げる」という意味で、走り方に変化をつけて体に負荷をかけながら脚筋力を強化していきます。

 例えば、10kmを練習で走る場合ならば、4つの区間に分けて、走るスピードをコントロールしていきます。最初の3kmはジョギングで楽に会話ができるペースで走ります。次に、30~60%ぐらいにスピードを上げて3km走ります。そして最後の3kmを60~80%の速度で走り切り、ラスト1kmは再びジョキングに戻すといったものです。走る距離に応じて4区間をさらに細かく区切ったビルトアップ走を取り入れてもいいでしょう。

 この練習は脚筋力を強化できるので、金子さんの質問にある「最後の5kmをスピードアップしたい」といった人には効果的です。ハーフマラソンでタイムアップを目指したい人はぜひ取り入れるといいでしょう。

 一方、持久力を高めるためには、「心肺機能」を向上させることが大切です。そのためには、「ペース走」という練習方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。これは、一定の距離を一定のスピードで走り続けるもので、初心者であれば、1kmを6~7分くらいのペースで、3~5kmを走ります。慣れてきたらペースを少しずつ上げたり、距離を伸ばしたりしていきます。

一定のペースで走り続ける「ペース走」を取り入れることで心肺機能の向上が期待できる。
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 ここでご紹介した練習法が、どうしても時間的な制約でできないという人は、練習するコースに坂道を取り入れた「起伏走」がお勧めです。「登り坂」ではペースを上げ、「下り坂」ではゆっくり降りてリカバーするという方法です。効果的に筋肉を鍛えることができ、スピードとスタミナのアップを共に実現できます。





 安喰コーチが教えてくれたメソッドは、日常の中でも、ちょっとした時間を見つけて取り組めるもの。早速、「肩甲骨」と「股関節」の柔軟性を高めることを意識して取り組んでみましょう!

 次回は、「ランニングフォームを見直す方法」をご紹介します。ぜひご覧ください。


(取材・文:松尾直俊、撮影:村田わかな、撮影協力:アディダスジャパン)

安喰太郎(あぐい たろう)さん
Harriers代表 アディダス ランニングアドバイザー
安喰太郎さん 1974年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、イギリスに渡り英国陸上競技連盟コーチの資格を取得。帰国後の2005年に会員制ランニングチーム「Harriers(ハリアーズ)」を設立し、代表を務める。36歳になる年にフルマラソンで自己ベストを出すなど、ランナーとしても活躍中。日本体育協会公認陸上競技指導員。