不眠症、まず生活習慣をチェック 睡眠薬に頼らず改善
日本経済新聞電子版
うつや糖尿リスク
三島部長は「不眠を専門的に扱う精神科や心療内科の医師が処方する割合は睡眠薬全体の3割にとどまる」と指摘する。
一方、不眠症が続くと、うつ病や糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などの発症リスクが高まることが明らかになりつつある。厚生労働省研究班と日本睡眠学会は13年、「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」を公表。薬物療法だけでなく、早期からの心理・行動療法も組み合わせて治療するよう求めている。
「睡眠外来」などを設ける医療機関は増えている。国立精神・神経医療研究センターは「睡眠医療プラットフォーム」では睡眠障害のセルフチェック方法や医療機関などを紹介しており、受診の参考になる。
中高生の患者増える 夜間スマホ 脳が昼と錯覚
スマホやパソコンを操作する時間が増え、中学・高校生など若年層でも睡眠障害は珍しくない。睡眠医療の専門家は画面(ディスプレー)が発するブルーライトが睡眠障害を引き起こしていると指摘する。
ブルーライトは可視光線の中でも紫外線に近い光。夜間にブルーライトが目に入り続けると、昼間と錯覚して脳が覚醒してしまう。ブルーライトは蛍光灯や発光ダイオード(LED)照明でも多く生じるという。
ブルーライト研究会の世話人代表で慶応大医学部の坪田一男教授によると、近年の研究で、ブルーライトが眠気を催して睡眠の準備を整えるホルモンであるメラトニンの分泌を抑えることが分かってきた。
治療は睡眠指導のほか、重症の患者はメラトニン受容体に作用する睡眠薬を処方したり、強い光を浴びせて体内時計の狂いを修整する治療をしたりする。予防には太陽光など昼間に光を浴びることが有効だという。
藤田保健衛生大病院の北島剛司准教授(睡眠外来)は「最近は高校生の患者が多く、ブルーライトも原因の一つと言える。就寝前にはスマホやパソコンの操作を控える対策が必要だ」と話している。
(編集委員 木村彰、川口健史)
[日本経済新聞朝刊2017年12月18日付]