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トピックス from 日経電子版

増える潰瘍性大腸炎 下痢や血便繰り返す難病

 日本経済新聞電子版

 さらに、壊疽(えそ)性膿皮症や関節炎などの合併症に加えて、7年以上症状が続くと大腸がんになることもある。診断には血液検査、エックス線検査、内視鏡検査などを組み合わせる。「患者は少なくとも年1回、内視鏡検査をしないとがんの発見が遅れる恐れがある」(溝上教授)

 治療は炎症を抑える薬物療法が基本。最近は選択肢が増えてきた。5―アミノサリチル酸製剤の服用が一般的で安倍首相が使用を明らかにした「アサコール」もその一種だ。

 それでも症状が改善されないときは、副腎皮質ステロイド剤やイムランなどの免疫を調節する薬を使う。効き目が強いとされる抗TNFα抗体は、中等症から重症の患者向けだ。抗TNFα抗体などは生物学的製剤と呼ばれ、使える種類も増えている。

 潰瘍性大腸炎の患者は約7割が軽症のため、多くは5―アミノサリチル酸製剤や免疫調節剤で改善する。「適切な治療を受ければ、多くの場合は普通に日常生活を送れる」と東京医科歯科大学の渡辺守教授は指摘する。

 ただ再発する例が多く、油断は禁物だ。下痢などの症状が収まってもすぐに薬をやめてはいけない。粘膜の炎症などが続いている場合があり、内視鏡で大腸の中を確認するまでは医師の指導に従って薬を飲み続けた方がよい。

 渡辺教授らは安くて効き目の高い薬を日本から世界に発信しようと、臨床試験(治験)に取り組んでいる。新薬の候補は、リンパ球の表面にある特定のたんぱく質の働きを妨げる「AJM300」。東京医科歯科大学や東邦大学医療センター佐倉病院、北里大学北里研究所病院、味の素製薬などが協力している。

 有効性や安全性を調べる第2相試験では、中等症の患者に服用してもらい、有効だと確認できたという。来春までに治験を終え、約3年半後の実用化を見込む。

 潰瘍性大腸炎は薬の選択肢が増えたうえ、メカニズムの解明も進みつつあり、多くの専門家が完治を目指し研究に取り組んでいる。渡辺教授は「難病だからと患者は過度に心配しなくてよい。きちんとした治療を受けることが大切だ」と注意を促す。

再生医療など研究進む

 潰瘍性大腸炎の治療は薬が基本だが、症状が重いままだったり再発を繰り返したりする場合は「大腸切除術」という外科手術の実施も検討する。

 この手術では、大腸をすべて切り取ったうえで、小腸を袋状にして肛門に縫い合わせる。便をためるなどの大腸の役目を小腸が担う。

 大腸を失うことになるが、その後は薬の投与や入院が不要になる例が多い。ただ、小腸に炎症が起こる恐れもあるので、手術後も定期的に検査を受けることが欠かせない。

 日本で開発された「血球成分除去療法」という治療法もある。免疫システムで外部から侵入した細菌やウイルスから体を守るのが白血球だ。潰瘍性大腸炎の患者は白血球が自分の腸を攻撃する。そこで血液を体外に取りだして白血球の中の炎症に関与する「顆粒球」などを取り除き、体内に血液を戻す。

 再生医療の研究も進んでいる。東京医科歯科大学の渡辺守教授らは、マウスの大腸の上皮にある幹細胞を体外で大量に培養し、傷んだ大腸に戻した。組織が再生するのを確認できた。

 炎症を抑えるのを目的とした従来の治療とは異なり、この手法は傷んだ組織を治す「粘膜治療」が可能になるという。潰瘍性大腸炎や、同じ炎症性腸疾患であるクローン病などの臨床応用を目指している。このほか、健康な人の腸内細菌を患者に移植する「便移植」という手法の研究も進む。

 研究をしている臨床医の間では「症状緩和」から「完治」へと治療目標が変わりつつある。

(山本 優)

[日本経済新聞朝刊2015年12月13日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。

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