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柔道整復師を知る 外傷は保険適用、肩こりは自己負担

 日本経済新聞電子版

 柔道整復師は接骨やほねつぎなどの名称で骨折や脱臼、ねんざなど外傷の手当てをする国家資格だ。戦国時代の武術にルーツを持つ伝統医療で全国に約4万5000の施術所がある。リラクゼーション店などと異なり健康保険が使えるが、肩こりなどはその対象外。不正請求が問題になることも多い。正しく理解して利用したい。

 「病院よりも身近で通いやすい。親身にみてもらえる」。1年前に階段から転落し、左手首を骨折した東京都江東区の女性(78)は週2~3回、江東眞栄接骨院(同区)に通う。こわばりやすい関節を柔道整復師が慎重にほぐし、微弱な電流を流して痛みを緩和する。同院の伊藤述史院長は「骨や筋肉など解剖学の知識に基づいた施術が特徴」と説明する。

起源は戦国時代

施術する柔道整復師
(東京都江東区の江東眞栄接骨院)
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 日本柔道整復師会によると、柔道整復の起源は戦国時代の武術。攻撃する「殺法」と、ケガを治す「活法」の2つの考え方のうち、殺法は競技柔道や柔術に発展した。活法が体系化されたのが柔道整復術だ。

 明治維新後に一時規制されたが、1920年に公認され、国家資格として整備。まだ医師が少なかった大正時代や昭和初期に、骨折などの外傷の手当てを担う存在として定着した。

 医師による「医療行為」とは異なり、手術や投薬はできない。手を使った「徒手整復」という技術で、折れた骨をつないだり、脱臼を元に戻したりするほか、電気療法、温熱療法などで痛みを和らげ、回復を促す。治療ではなく「施術」、病院・診療所ではなく「施術所」など用語も異なる。

肩こりは自己負担

 健康保険が使えるのは骨折、脱臼、打撲、捻挫などの外傷だけだ。骨折と脱臼への対処は緊急の応急手当てを除き、医師の同意を得なければならない。肩こりや筋肉疲労など外傷以外の症状で施術を受けても保険の対象にならず、全額自己負担になる。

 保険の使い方は医療機関とは異なり、患者が窓口でいったん全額を支払い、自己負担分を除いた7~9割部分を患者自身が保険請求する「償還払い」が原則だ。ただ実際には、患者が手続きを施術所側に委任する「療養費受領委任払い」という特例を使う場合が多い。患者は必要書類に署名すれば、ほぼ一般の医療機関と同じ感覚で利用できるようになる。

 柔道整復師は「接骨院」「整骨院」「ほねつぎ」などの名称で開業している。カイロプラクティックや整体などは民間資格で保険は使えない。一方で柔道整復師が保険を使わず、マッサージなどを提供することも多い。その場合は全額自己負担だ。

柔道整復師と他の資格の違い
医師柔道整復師あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(通称あはき師)その他の民間療法
健康保険の利用一部可一部可不可
資格・根拠法国家資格(医師法)国家資格(柔道整復師法)国家資格
(通称あはき法)
民間資格など(根拠法なし。人の健康に害を及ぼすおそれのない限度で可)
施設名の例病院、診療所、クリニックなど接骨院、整骨院、ほねつぎなど鍼灸(しんきゅう)院、治療院、マッサージ院などカイロプラティック、リラクゼーションサロン、整体院、アロマテラピー、リフレクソロジーなど

養成施設の設立急増

 厚生労働省によると、就業している柔道整復師は2014年時点で全国に6万3873人。30年前の約3倍に増えた。国民医療費約40兆円の1%にあたる年約4000億円が柔道整復に使われている。

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 整復師が急増しているのは、養成施設がそれだけ増えているためだ。1998年に「基準を満たす養成施設を指定しないのは裁量権の逸脱」として国が敗訴する判決があり、当時14校だった養成施設は現在109校へと膨らんだ。

 一方で肩こりなど保険適用外の症状なのに、ねんざや打撲などと偽って保険請求する事例が相次ぎ発覚。一部の健康保険組合は患者に手紙を送り、実際の施術と請求内容に食い違いがないか確認している。

 昨年11月には患者ぐるみで療養費を架空請求したとして、暴力団組長らが警視庁に詐欺容疑で逮捕された。詐取総額は1億円超に上り、暴力団の資金源になったとされる。

 事件を受け、社会保障審議会の専門委員会は今年9月、指導・監査を担う地方厚生局の人員増や、保険者の審査権限強化などの方針を決めた。厚労省の有識者会議も養成施設のカリキュラムを見直し、18年度から卒業に必要な単位数を85から99に増やし、最低履修時間も2750時間に設定。職業倫理などの授業も新たに義務付ける。

 日本柔道整復師会の三橋裕之理事は「試験合格直後に開業したり、施術機器がなかったりと、十分な施術ができるか疑わしいケースもある」と指摘。「『100円マッサージ』などとうたう場合は明らかにおかしい。利用せずに厚生局などに情報提供してほしい」と呼び掛けている。

(倉辺 洋介)

[日本経済新聞夕刊2016年12月1日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。
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