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風疹患者拡大中 30~50代男性、高い感染リスク

妊婦への影響深刻/ワクチン、抗体検査を受けて

 日本経済新聞電子版

風疹の感染が拡大している。患者の大半は働き盛り世代の男性だ。妊婦が感染すると、胎児に深刻な障害を引き起こすリスクがある。確実な予防法はワクチンのみ。抗体検査も活用して、発症を防ごう。

写真はイメージ=(c)liza5450-123RF

 今年発症した風疹患者は10月21日時点で1486人(国立感染症研究所調べ)。昨年1年間(93人)の約16倍となり、増加は1万4344人が発症した2013年以来の勢いだ。

 風疹とは発熱やリンパ節の腫れなどを伴うウイルス性の発疹症。通常は1週間以内に治るが、「成人がかかると重症化しやすく、入院するほどの高熱が出ることもある」と順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学の堀賢教授は話す。

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 今年発症した患者の96%が成人。8割以上が男性で、中心は30~50代だ。大人から大人へ感染が広がっており、職場や地域、家庭で妊婦や妊娠可能な女性に風疹がうつるケースが最も危惧されている。

 妊娠20週までの妊婦が風疹ウイルスに感染、胎児にも感染すると目や耳、心臓に深刻な障害を起こす「先天性風疹症候群」となることがある。妊娠初期ほどリスクは高く、母親が感染した場合、妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%の胎児に影響が出るとの報告がある。

 風疹はインフルエンザと同じく、せきやくしゃみ、会話などでうつる(飛沫感染)。症状が出る1週間前から他の人にうつり始め、免疫がない人の集団だと、1人の患者からの二次感染の平均は、インフルエンザの1~2に対して風疹は6~7という。

 中には症状が出ずに人にうつす「不顕性(ふけんせい)感染」もあるので、「確実な予防策はワクチン接種しかない」と国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長は明言する。

 風疹は一度かかるか、ワクチンを受けるかすると体内に抗体ができ、二度と感染しない。1回のワクチン接種では抗体ができない人も5%いるので、2回接種が望ましい。

 現代の子供は、小学校入学前に風疹ワクチンを2回受けている。60代以上の世代はワクチンがなくても、幼少期に発症して自然に免疫を得るのが一般的だった。一方で30~50代の男性は風疹にかからず、ワクチンも未接種のため、抗体を持たない人が多い

 子供時代にワクチンを受けたかどうかは、母子健康手帳で確認できる。過去に発症していれば抗体を持っているはずだが、「風疹と診断されたが、実は違っていたという例も少なくない」(堀教授)ので注意が必要だ。身近に妊婦がいない人も油断は禁物。妊娠初期だと、本人も妊娠に気付いていないためだ。「自分のためではなく、集団を守るためにワクチンを受けてほしい」と堀教授は強調する。

 風疹ワクチンは3回以上受けても害はない。MRワクチン(麻疹・風疹の混合ワクチン)を選んでもよい。内科などで申し込むと、通常1週間程度で受けられ、2~3週間で抗体ができる。費用は5000~1万円程度だ。

 ただ「定期接種以外に使えるワクチンは今、数十万人分しかない」(多屋室長)。接種歴が確認できない人は、まずは風疹の抗体の有無を調べよう。検査費用を助成する自治体もあり、妊娠を望む女性と妊婦の同居家族は無料で検査できることが多い。抗体価が低いと分かったら、すぐにワクチン接種を申し込む。

 風疹にかかったら、とにかく人前に出ないこと。早めに対策を打てるように職場には発症を報告し、症状が軽くても出勤は避ける。不用意に医療機関に行くと、待合室などでウイルスをまき散らしかねない。「いきなり受診するのではなく、まずは電話で相談して」と多屋室長は助言する。

(ライター 伊藤和弘)

[NIKKEIプラス1 2018年10月13日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。