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潜在患者100万人超 怖い心房細動、早期発見の方法

 日本経済新聞電子版

不整脈の一種「心房細動」の患者数は潜在患者も含め100万人を超えるとされる。放置すると脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こす可能性がある。防ぐには、早期発見と生活習慣の見直しが欠かせない。

写真はイメージ=(c)belchonock-123RF

 秋の健康診断の心電図検査で「不整脈」と言われた人もいるだろう。多くの不整脈は命に関わることはないが、中には注意が必要なものもある。その一つが心房細動だ。

 心臓は、規則的に電気信号が起こることで正しく動く。しかし、心房細動では無秩序な電気信号が起こることで心臓が震えるように動き、正常な拍動ができなくなる。

 「加齢とともに増えるが、最近では40~50代の働き盛りの人にも多い」と筑波大学の野上昭彦教授は指摘する。

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 心房細動が怖い理由は2つある。一つは心臓の機能そのものを弱らせ、心不全の原因になること。もう一つが、正常な拍動ができないことから、心臓内の血流が悪くなり血栓ができることだ。「心臓内にできた血栓が体内に流れ、脳梗塞などを起こす」と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の草野研吾部長は警鐘を鳴らす。

 心房細動で脳卒中(脳梗塞)を引き起こすことは死亡や寝たきりの原因となる。心房細動患者はそうでない人に比べて5倍脳卒中になりやすいとの報告もある。

 心房細動の予防には生活習慣の改善が大切。喫煙、過度な飲酒、肥満などはリスク要因だ。睡眠時無呼吸症候群や高血圧、糖尿病の人もなりやすい。

 重篤な状況に陥らないためには早期発見が重要だ。主な初期症状は、動悸(どうき)、脈が飛ぶ、息切れなど。「激しい動悸により救急搬送される人がいる一方で、はっきりした症状がない人も少なくない」と野上教授。心房細動は心電図検査で診断される。心房細動が時々起こる発作性のタイプの場合には、すぐに見つからないケースも少なくない。

 しかも「症状がなかった人の方が発症時に心房の変形が進んでいることが多いので、常に自分の心臓の状態を気にかけ見つかったらすぐに治療することが大切」と草野部長。心臓の状態を知るには普段から脈を測るといい。「脈の間隔や、強弱をみる。一定のリズムや強さでないことが何度かあれば循環器科の受診を」と草野部長は注意を促す。

 心房細動の治療法は「薬物治療」や「カテーテルアブレーション治療」などがある。心房細動と診断された人でも、すぐに心房細動を抑える薬や心拍数を調節する薬を飲まなくてもいいケースもある。ただし、「心不全、高血圧、糖尿病、脳梗塞の既往がある人や高齢者など脳梗塞のリスクが高い人は、血液を固まりにくくする抗凝固薬の治療がまず必要」(野上教授)。

 アブレーション治療は、心臓の異常な電気信号を出している部位を焼く、心房細動の根治療法。専用カテーテルを足の付け根の太い血管などから心臓まで入れて行う。体への負担が小さく、手術時間は3~6時間。入院期間も数日でいい。ここ数年で実施件数は急増し、2017年度には約7万5000件に上る。

 帝京大学循環器内科の上妻謙教授もアブレーション治療を受けた一人。「飲みすぎた翌日に脈が飛ぶのを感じていたが、健診の心電図検査では不整脈がなく数年ほど放置していた」。49歳の時、勤務中に不整脈が出た際の心電図検査で心房細動と診断され、薬物治療後に同治療を受けた。

 最近では心房細動による脳卒中を予防するためのカテーテル療法も登場。心房細動時に血栓ができやすい部位(左心耳)に蓋をして血栓の移動を防ぐものだ。抗凝固薬による出血のリスクを低減できる方法として注目されている。

(ライター 武田京子)

[NIKKEIプラス1 2019年9月28日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。