早食いは過食しがち
良くかめばエネルギーも消費
日本経済新聞電子版
あなたは食べるのが早い方だろうか、遅い方だろうか。早食いの人は太りやすいといわれるが、最近の研究でそのメカニズムが分かってきた。早食いを改め、よくかんでゆっくり食べるようにすると、太り過ぎも予防できるようだ。秋の味覚についつい食が進む季節。食べ方を見直してみてはどうだろう。
子供のころ、「よくかんで食べなさい」と言われた人は多いだろう。だが、大人になって時間に追われる生活で早食いが習慣になった人も少なくないのではないか。
早食いの難点は、よくかまずにのみ込むので胃腸に負担がかかること、脳が満腹感を覚える前にたくさん食べてしまうので、過食になりやすい点などが挙げられる。
東京工業大学社会理工学研究科の林直亨教授は、「早食いの人は太りやすいと多くの研究で報告されている」と話す。林教授らが女子大学生84人におにぎりを食べてもらい調べた研究でも、かむ回数が少ない早食いの人ほど体重や体脂肪率が高くなる傾向があった。
肥満4倍多く
さらに岡山大学が大学生1314人を3年間追跡調査したところ、早食いの人はそうでない人より4.4倍肥満になりやすかった。早食いの習慣は、他の「油っこい食事を好む」「満腹まで食べる」といった習慣よりも肥満になるリスクをあげていた。
早食いの人が肥満になりやすい原因は過食だけではないらしい。林教授らの研究では、食事量は同じでも、早食いの場合は、食べ物の消化や吸収などに費やされるエネルギー「食事誘発性体熱産生(DIT)」が低く抑えられることが分かった。
1日の総エネルギー消費量の内訳は、呼吸や体温などの生命維持に必要な基礎代謝量が約60%、運動などの身体活動量が30%、そしてDITが10%を占めている。食べることはエネルギーを摂取することであると同時に、エネルギーを使う行為でもある。
実験では10人を対象に、試験食をできるだけ早く食べる場合と食塊がなくなるまでかんでから飲み込む場合とでDIT量を比較した。その結果、食後90分間のDIT量の平均値は、早く食べるよりゆっくり食べた方が明らかに多かった。
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