舌の筋トレ、ご存じですか? かむ動作助け呼吸正しく
食べこぼしは衰えのサイン
日本経済新聞電子版
日常生活での注意も大事だ。菊谷院長は「家から出て人と話し、会食するなど、生活の中で舌を使う機会を減らさないように」とアドバイスする。特にリタイア後の世代は、自宅にこもりっきりになりやすい。「外に出ておしゃべりし、舌を鍛える」と意識しよう。
なお、50~60代で、食べこぼしなどが急に目立ち始めた場合は、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)といった病気のことも考えられる。運動神経の働きが落ち、舌の機能が急速に衰えている可能性もある。そんな場合は神経内科を受診しよう。
◇ ◇ ◇
全身の筋力とも関連、機能維持を
舌の筋力は、全身の筋力とも関連している。2000人以上の高齢者の体力を調べた厚生労働省の調査によると、脚力や握力が弱い人は舌の力も弱かったという。「舌は筋肉。全身の筋肉と一緒で、使わなければ衰える」(菊谷院長)。舌の筋力低下でかみ砕く力が落ちると、肉などのタンパク質が豊富な食べ物を食べにくくなる。タンパク質は筋肉の原料。不足するとますます筋力が落ちるという悪循環になる。
「機能が落ちきってしまうと、回復は難しくなる。余力があるうちから、舌の筋力維持を心掛けたい」と菊谷院長。もちろん、歯のケアも、かみ砕く力を保つためには欠かせない。
(ライター 北村昌陽)
[日経プラスワン2016年10月1日付]