舌の筋トレ、ご存じですか? かむ動作助け呼吸正しく
食べこぼしは衰えのサイン
日本経済新聞電子版
「舌は何をするところ?」と聞かれたら、何と答えるだろう。味を感じるだけかと思いきや、食べたものをかむのを助けたり、のみ込んだりするときに大活躍している。この働きが鈍ると、食べることもままならなくなる。さらに呼吸をする上でも、大事な役割を担っているという。健康な生活のカギを握るのは「舌の筋力」だ。
舌の働きでまず思いつくのは、食べ物の味を感じる味覚だ。「滑舌」「舌が回る」といった言葉から連想されるように、声を発するときも働く。
自覚しにくいが、舌は「食べる」ときにも重要な働きをしている。「かむ、のみ込むといった動作は、舌なしではできない」と日本歯科大学口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニック(東京都小金井市)の菊谷武院長。
かむのは歯の機能だと思うかもしれない。だが、ほおばった食べ物をかみやすいように歯の上に運ぶのは舌の役割。のみ込むときにも、舌が食べ物を塊にまとめ、喉に押し込んでいる。
厚生労働省などが推進し、満80歳で自分の歯を20本以上歯を残そうという「8020運動」の成果で、高齢者の残存歯数は大幅に増加している。ところが「歯がたくさん残っているのに食べる機能が落ちてしまう人が少なくない。舌の重要性に注目が集まってきた」と菊谷院長は説明する。
舌は筋肉でできた組織だ。筋力は加齢とともに衰える。足や腰の筋力が落ちると歩行が困難になるように、舌の筋力が低下すれば、うまく食べられなくなるという。
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