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かすれ声は老化のサイン 踏ん張りきかず転倒原因にも

 日本経済新聞電子版

年齢を重ねると声の張りがなくなり、聞き取りづらいと言われることが増える。声帯の老化はコミュニケーションの支障のほか、踏ん張りがきかず転倒や肺炎のリスクも高める。仕組みを知り適切に対処したい。

写真はイメージ=(c)chajamp-123RF

 動画や録音で客観的に自分の声を聞いて、昔と変わっていることに気づき、がくぜんとしたことはないだろうか。

 山王病院東京ボイスセンター(東京・港)長で国際医療福祉大学医学部の渡邊雄介教授によると「声は30代から衰え始める。声帯とその周りの筋肉が衰えていくのが主な原因」だ。

 声帯とは、のど仏の奥にある左右一対の小さなヒダ。粘膜に覆われた筋肉でできている。息を吸うときは左右に開き、声を出すときは閉じるようになっている。この開閉を周りの筋肉が助けている。

 声が出る仕組みはこうだ。肺からの呼気が閉じた声帯の隙間を通り抜けるとき、声帯が細かく振動して声の原音ができる。この原音がのど、口、鼻の中を通るときに共鳴し、その人特有の声になる。

 肺機能や共鳴機能の低下も影響するが、特に声帯とその周りの筋力低下は、声の老化に大きく影響する。声帯がきちんと閉じないと振動しにくく、それが声の出しづらさにつながるためだ。

 「たかが声」と思いがちだが、声帯周りの衰えは、転倒リスクや肺炎リスクにもつながる。声帯には息を吸う、声を出す以外に気管をふさぐ役割もあるからだ。

 気管を閉鎖して肺に息をため込めることで胸郭が安定し、上半身がぶれず身体の全体に力が入る。「できないと、つまずいたときに踏ん張れない。また、食べ物が気管に入ってしまい誤えん性肺炎を引き起こす恐れがある」。渡邊教授はそう警鐘を鳴らす。

 東京ボイスクリニック品川耳鼻いんこう科(東京・港)の楠山敏行院長は、中高年になると、男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンの分泌低下で、声帯と声に男女逆の現象が起きる傾向があると指摘する。「男性は声帯が萎縮し、声が高くなる。女性は血流が悪くなって声帯がむくみ、声が低くなる。これは弦楽器の弦が細いと音色が高く、太いと低くなるのと同じ」

 ホルモン分泌のコントロールは難しいが、声帯とその周りの筋肉を鍛えることは、何歳からでもできる。

 楠山院長によれば「声帯の筋トレに有効なのは歌うこと」。歌う習慣がある人は声帯が衰えにくい。ただし叫ぶようにしたり高すぎるキーで歌い続けたりするのは、逆にのどを痛めるので控えよう。

[画像のクリックで拡大表示]

 渡邊教授が勧めるのは呼吸、声帯の振動、共鳴が総合的に鍛えられる「の↑の↓発声法」。「口を小さくすぼめ『のー』を低音から高音まで、鼻に抜けるように発声する。そして『のー』を高音から徐々に低くしていく」。10回1セット×1日3セット行いたい。

 声帯の振動には潤滑油として粘膜の潤いが必要だ。加齢によって粘液が減り乾燥すると、声帯の劣化が進む。楠山院長はこまめに水を飲むことを勧める。水を飲むと副交感神経が優位になり、脳から指令が出て声帯が潤う。「声をよく使う場面では、意識して水を飲んでほしい」という。

 口呼吸は声帯を乾燥させるので鼻呼吸を心がける。たばこも控えたほうがいい。有害物質が声帯を劣化させる。

 「ファストフードのセットメニューは、のど焼けと声枯れの原因になりかねないので要注意」(渡邊教授)。脂質の多い食べ物と炭酸飲料の組み合わせは胃酸の逆流を起こしやすい。声帯の劣化につながる可能性がある。過剰に取り過ぎないようにしたい。

 今日からトレーニングと生活習慣の改善を始めて、声の張りを取り戻そう。

(ライター 松田亜希子)

[NIKKEIプラス1 2020年9月12日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。

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