高齢者の「薬漬け」対策急ぐ 学会指針、専門外来…
体力低下、副作用出やすく
日本経済新聞電子版
高齢者が服用する薬を減らす取り組みが広がってきた。学会が薬を適切に選ぶためのガイドラインをまとめ、専門外来を置く病院もある。多くの薬を一緒に飲むと副作用が出やすくなり、特に体力が低下した高齢者に顕著なためだ。出血や転倒などで亡くなるリスクも高まってしまう。75歳以上の約3割が10種以上を服用しているとの報告もある。“薬漬け”対策は急務だ。
8月下旬の夜。東京都港区の虎の門病院に高齢患者が救急搬送された。自宅でふらついて倒れ、意識もはっきりしない。幸い、検査では異常は見当たらず、一晩で回復。家族は胸をなで下ろした。
西田昌道・救急科部長は「処方された多種類の薬を飲んでいて、その影響が出たと考えられる」と話す。昨年2~4月に救急搬送された高齢者約700人を調べたところ、薬の副作用が疑われる人が60人近くにのぼったという。
多種類の薬を飲む多剤併用は、ふらつきや臓器障害など副作用の危険性が高まるとして問題視されている。とりわけ高齢者は内臓機能が衰え、薬の処理能力が落ちている。種類や用量の慎重な見極めが必要だ。
一方で病気を複数抱え、医療機関を幾つも受診する高齢者は多い。それぞれの医師は患者が服用する薬全体を把握せず、自分が受け持った病気だけを診て処方しがちだ。結果、患者が服用する薬は増えてしまう。
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