水虫で転倒しやすく? 歩き方に異変、高齢者注意
水洗い・保湿で予防/足の爪は短く保つ
日本経済新聞電子版
早稲田大学スポーツ科学学術院の中村好男教授らが1万581人を対象に調査したところ、足の指や爪に水虫などの問題を抱えている高齢者で、過去1年間に転倒経験を持つ人の割合は、そうでない人よりも高かった。
水虫や爪白癬など「足に疾患があると、足の指が地面に付きにくくなり、バランスを崩したり、すり足になったりして転倒する可能性がある」(中村教授)。
足の爪は移動するときに重要な役割を果たす。「歩行時に足の指で地面を蹴るとき、足の爪には大きな力がかかる」と中村教授。ところが「爪白癬にかかると爪がもろくなるため、足先に力が入らずよろけてしまい、転倒するリスクを招く」と藤谷教授は指摘する。
なかでも爪白癬になりやすい足の親指は、踏ん張るときに力がかかる場所だ。水虫で爪が弱ると、踏ん張れなくなって転んでしまう。さらに「水虫にかかった爪が剥がれることで、歩行困難に陥るケースもある」(藤谷教授)という。
高齢者は特に注意が必要な水虫だが、「予防はシンプルで、完治も可能」と藤谷教授。一番有効なのは、1日1回足を洗って、原因の菌を取り去ることだ。
白癬菌は水虫の人の足から剥がれ落ちた垢(あか)に数多く潜み、スポーツジムや介護施設など人が集まる場所でまき散らされる。足に付いた菌を放置すると、約24時間かけて角質に侵入し、感染する。
せっけんを泡立てて指の間や爪の溝の周り、足裏をよく洗う。水で流してから、乾いたタオルで拭きとる。バスマットの共有は避ける。足の指の間を拭くのも効果的だ。ただし「消毒用アルコールでは菌は落ちない」(藤谷教授)。せっけんの方が殺菌作用が大きいという。
足の爪は短く保つ。同じ靴を履いたり、靴下を長時間履き続けたりすると、足が蒸れて白癬菌の増殖を招くので、毎日履き替えよう。サンダルの素足履きでかかとがかさつき、菌が入りやすくなって水虫に感染する例もある。クリームで保湿を心がけたい。
日ごろの足の使い方も重要だ。「歩き方を意識しないでいると、水虫は繰り返す」(中村教授)。歩行時はかかとと親指の付け根、小指の付け根の3点を意識して、かかとから足の指へ重心を移動する習慣を身につけたい。
水虫は完治を目指せるだけに、皮膚科専門医による見極めが必要だ。毎日足を洗うことに加えて、菌を持つ人が自覚してしっかり治療を受けることが、他の人の水虫の予防にもつながる。
(ライター 高谷治美)
[NIKKEIプラス1 2017年9月16日付]