がんと共に働く 企業も理解し、新戦力に
日本経済新聞電子版
日本では年間約100万人が新たにがんと診断され、その3割は15~64歳の就労世代だ。医療技術の向上で、がんになっても治療を続けながら働くことが可能になってきた。がん経験者の声をくみ上げ、働きやすい環境を整備する動きも出始めている。専門家は「がんと診断されても仕事を辞めず、両立の道を探ろう」と呼びかけている。
親族が患者になった経緯から膵臓(すいぞう)がん患者で組織するNPO法人、パンキャンジャパン(東京)を2006年に設立した真島喜幸理事長は、12年に膵臓内の至る所で細胞ががん化する多発性であることが分かり、膵臓をすべて取り除く手術を受けた。
早期発見で転移の心配はなかったが、血糖値を調整するホルモン、インスリンを作れなくなる。手術の決断は悩んだ。担当の医師から「好きなゴルフはやめずに済み、お酒は少量なら飲める。海外旅行も可能だ」と聞き決心した。
手術後当初は、朝食を取ると胃に激痛が走るなど予想していなかった事態に遭遇した。対処は試行錯誤。1年ほどかけて自分に合った生活スタイルを探った。今は米国製のインスリンポンプを装着し、食事と一緒に消化酵素を服用する。NPO経営に支障のない生活を送っている。
膵臓がんは診断から5年後の生存率が約8%。治癒の難しいがんの代表といわれる。治療法の改善で20年ごろの5年後生存率は12%になると予想されている。「就労と治療の両立は真剣に考えなければいけない問題だ」(真島理事長)。膵臓がん経験者は全国に約4万人おり、神奈川や静岡、大阪などに支部を設け、活動基盤を強化中だ。
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