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脂質異常症を放置しない 中年の4~5割は健診で異常値

 日本経済新聞電子版

健康診断でコレステロール値が高いといわれても、症状がなく放置する人も多い。しかし、脂質異常症は動脈硬化を進め、心筋梗塞など命に関わることもある。自分のリスクを知って、早く適切に対処したい。

写真はイメージ=(c)Jarun Ontakrai-123RF

 「40~50代の人の4~5割は健康診断で何らかの脂質異常症がある」。国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典氏はこう指摘する。

 脂質異常症とは、血液中の脂質のバランスが悪いこと。悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロール値が基準値より高い、善玉のHDLコレステロール値が低い、中性脂肪が高いなど、いずれかに異常値がある状態だ。

 一方、コレステロール値が高くても特に症状がなく危機感を抱きにくいため、放置する人も多い。しかし脂質異常症の状態が続くと、血管が硬くなったり、内側に脂肪がつき血行が悪くなるなどの動脈硬化が進む。心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患や認知症を引き起こす。

 これらの病気は日常生活に支障をきたすうえに死亡要因の約24%を占め命に関わる。「動脈硬化性疾患予防のためにも早めに脂質を改善することが大切。最近では動脈硬化が新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを上げることもわかっている」。千葉大学医学部付属病院の横手幸太郎病院長は警鐘を鳴らす。

 一方で、脂質異常症による動脈硬化のリスクは、年齢や性別などで異なる。女性より男性、また、年齢が高いほどリスクが増す。喫煙習慣や高血圧などの基礎疾患といった危険因子の数も関係する。

 そのため「同じ検査値であっても人により治療の重要度も目標も異なる。血液検査の数値が高いからといってすべての人が同じ治療にはならない。リスクが高い人ほど脂質の値を低く抑える必要がある」(荒井氏)。LDLコレステロール値であれば、低リスクの人は基準値より高い160ミリグラム/デシリットル未満でよいが、高リスクの人は基準値より低い120未満にするのが治療の目標となる。

 では、どのようにリスクを見極めればよいか。日本動脈硬化学会が2018年に公開した診療ガイドが参考になる(イラスト参照)。冠動脈疾患や糖尿病、慢性腎臓病にかかったことがなく、LDLコレステロール値が高い人などのリスクが確認できる。また、同学会が公開する「冠動脈疾患発症予測ツール これりすくん」では数値入力で10年以内の発症確率がわかる。

[画像のクリックで拡大表示]

 治療の基本は生活習慣の改善だ。まずは食事を見直す。動物性脂肪などはLDLコレステロール値を上げるので控える。油についてはマーガリンならトランス脂肪酸を抑えたものを選び、青魚に多いn―3系油をとるように心がける。「ただし、もともと取っている量や体質により、食事の見直しによる効果の度合いが違うので、まずは数カ月続けてみる」(横手氏)

 運動も欠かせない。ウオーキングや水泳などの有酸素運動を中心に、1回30分以上、少なくとも週3回行う。「筋肉が落ちる50代以降はスクワットなどの筋トレも組み合わせるといい」(荒井氏)

 低~中リスクの人は食事と運動で数値が改善する傾向にある。「3~6カ月生活習慣を変えても改善しない場合には薬による治療を考える。低リスクの人は不要なことも多いが、高リスクの人は早めに検討する」(横手氏)

 治療薬でまず使われるのが肝臓でのコレステロールの合成を抑えるスタチン。効果が十分に出ない場合は、小腸からのコレステロールの吸収を抑制するエゼチミブなどを併用するのが一般的だ。

 まずは自分のリスクの度合いを見極め、根気強く脂質異常症を改善したい。

(ライター 武田京子)

[NIKKEIプラス1 2020年8月22日]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。

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