もしかしてスマホ依存? 手放せない自覚あれば受診を
目立つ睡眠障害
日本経済新聞電子版
食事乱れメタボ
行動が対象なら、酒や薬物のように体はむしばまれないかというと、そうではない。樋口進院長は「昼夜の生活が逆転し、ほとんどの子どもに睡眠障害が起こる」と話す。遅刻と欠席を繰り返し、成績が低下、退学しなくてはならなくなることもあるという。
さらに食事もおろそかになる。1日1~2回、それもごく簡単に済ませるため「栄養失調気味で成長が遅れて、低血糖の状態が続く子どもがいる」(樋口院長)。一方、動かずに食べ続けて脂肪肝になったり、糖尿病に若くからなったり、中高年のメタボ顔負けの子も。長時間同じ姿勢で、いわゆるエコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)を起こすこともある。韓国では、86時間ゲームをし続けた青年が死亡した例も報告されている。
依存は、本人が自覚していないことが多いが、家族などが気付くポイントがある。まず、時間の感覚を忘れ、睡眠や食事など基本的な活動がおろそかになる。次に、ネットやスマホができなくなると、怒りや緊張状態、抑うつ状態などが現れ、口論やうそ、疲労などが目立つようになる。
ネット依存症には今のところ治療薬はない。同院は、外来治療、カウンセリング、ネットなしで過ごす楽しみを見つけるための日帰りでのケアや入院治療、家族会を柱に治療に取り組む。例えば、1日10時間以上ゲームをしていたのを2時間にするなど、患者の意向を取り入れながら、順次減らすよう指導している。
思春期の子どもは特にネットにはまりやすい。心も発達段階にあり、親に言えない秘密を友人と共有。結束を強めるのにスマホは格好の手段だ。
だが、ネット上の人間関係では一夜のうちに仲間外れにされることもあり、それが精神的ストレスとなり抑うつ状態を引き起こすこともある。田村教授はカウンセリングも手掛けているが「ネット依存やいじめがきっかけで家に引きこもる子どもが相当数いる」と指摘。「スマホが命」という子どもも多く、取り上げるだけでは解決しない。薬物の離脱症状に似た症状が出ることも。
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