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台風の季節は片頭痛注意報 気圧の変化、知って対策を

 日本経済新聞電子版

台風シーズンの夏から秋にかけて、低気圧の接近とともに片頭痛を訴える人は少なくない。昔からこうした天気の状態による頭痛は天気病みとも呼ばれていた。仕組みや予防方法を知ってしっかり乗り切りたい。

写真はイメージ=(c)wang Tom-123RF

 「片頭痛」は、頭の片側、もしくは両側が脈拍に合わせてズキズキと痛む頭痛のこと。月に1~2回、多い人では週に1~2回ほどの頻度で数時間から2~3日間、痛みが続く。日本では約840万人が悩まされている。

 同じ頭痛でも長時間のパソコン作業などで筋肉が緊張して起こる「緊張性頭痛」は体操や体を動かすことで痛みが引くことが多い。片頭痛は動くとかえって痛みが増す。頭痛以外に吐き気や嘔吐(おうと)、下痢を引き起こすことがあり、仕事や家事が続けられなくなるなど日常生活の大きな支障になることも少なくない。

 片頭痛はどんな仕組みで起こるのか。獨協医科大学病院(栃木県壬生町)の平田幸一病院長によると、光、音、匂い、空腹(血糖値低下)、ストレスなどによって脳が刺激を受けるとセロトニンという脳内物質が急激に増減を引き起こし脳の血管が広がる。その結果、血管周囲に網目状に張り巡らされた三叉(さんさ)神経を刺激して炎症物質が放出され、脳が痛みを感知する。片頭痛が起こる前に火花や歯車のような光が見えたり、肩こり、生あくび、異常な空腹感などの予兆を感じることもある。

 脳への刺激に過敏な人が片頭痛を引き起こすが、光、音、匂いのほか、気候や気圧の変化も引き金となる。

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 「低気圧によって人の体はむくみがちになる。このむくみが脳血管にも及んで片頭痛が起こりやすくなる」と話すのは東京女子医科大学(東京・新宿)客員教授の清水俊彦医師だ。夏から秋口にかけて、しばしば台風の接近するシーズンは片頭痛患者にはつらいシーズンとなる。

 平田病院長によると「片頭痛患者は女性が男性の4~5倍と圧倒的に多く、特に20~40代の女性に集中している」という。これはセロトニンが女性ホルモン(エストロゲン)の分泌と密接に関係があるからと考えられ、月経や排卵日前後に片頭痛が起こりやすいのはこのためだ。不規則な食生活や過激なダイエットで女性ホルモンのバランスが乱れても、片頭痛の原因になることもある。

 清水医師によると、日本人はがまん強く頭痛に耐えようとする傾向がある。医療機関にかからずに治そうとして、市販の頭痛薬に頼る場合もあるが、片頭痛の根本的な治療薬でないと度重なる服用がかえって頭痛を引き起こすケースもある。

 また、医療機関にかかったとしても頭痛に詳しくない医師だと「ただの頭痛で心配ない」と鎮痛剤(頭痛薬)を処方してすませてしまうこともある。「頭痛は立派な病気」だけに、清水医師は頭痛専門医がいる病院・クリニックなどでの受診を勧める。

 頭痛外来などで専門医が片頭痛患者に処方するトリプタン製剤は「血管のセロトニン受容体に作用し、血管の収縮と炎症物質の放出を抑制する」(清水医師)。片頭痛の根本原因に直接作用し、痛みを大幅に軽減できる薬だ。

 強い光が誘因することもあるので、夏場の外出時にはサングラスと日傘を準備しておきたい。家庭内でも、蛍光灯やパソコンのブルーライトを避け、できるだけ柔らかい光の照明器具を選ぶ。また、水分補給では硬水のミネラルウオーターがお薦め。脳血管を安定させる作用があるマグネシウムが多く含まれている。

 「どうせ治らない痛みだから」とあきらめるのではなく、片頭痛についてくわしく知ることが、症状の改善と予防につながる。

(ライター 大谷新)

[NIKKEIプラス1 2019年8月17日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。