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大股速歩で手軽に筋力アップ 歩幅目安は65センチ

正しい姿勢もポイント シニアでも、自分のペースで

 日本経済新聞電子版

大股でふだんより速く足を動かす「速歩」は通勤、買い物や散歩などの際に手軽にできる健康法だ。「マラソンやジョギングは体力的に自信がない」「運動する時間がない」という人も無理せず自分のペースでできる。シニアには足腰の筋肉を維持・強化するだけではなく、最近では認知症の予防にも効果がみられることが研究調査で明らかになってきた。

横断歩道の白線をまたぐようなイメージで歩くのが理想

 「速歩で重要なのは歩調(テンポ)をあげることでなく歩幅を広くすることです」。東京都健康長寿医療センター研究所の研究員、谷口優医学博士は、歩き方の工夫で、多くの人がすぐに始められると勧める。

 目標の歩幅は65センチ。中高年になると筋肉の衰えに加えて脳機能が歩幅の広さに影響するという。「横断歩道の白線をまたぐようなイメージで歩くのが理想」(谷口博士)という。

 体格や運動能力などの点で白線を越えるのが難しいと感じる人は、白線は一つの目安と考えればいい。

 ポイントとなるのは姿勢だ。(1)肘は自然に曲げて、腕を後ろに大きく、前は小さく振る (2)膝を伸ばしてかかとから着地する (3)おしりの筋肉を持ち上げて背筋を伸ばす。歩幅と姿勢がきちんとそろえば速度は自然に速くなる。普通のウオーキングに比べて足腰の筋肉が鍛えられる。

 さらに視線はなるべく前に保ち、へその下に力を入れる。手をあてて筋肉が硬くなっていればきれいな歩き方になっているという。

 反対に、悪い歩き方は「猫背で視線を下に落とすトボトボ歩き。ビジネス街でよく見かける帰宅途中の疲れた会社員の姿」(谷口博士)と注意を促す。

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 時計の輸入・製造卸のインテック(東京・台東)は歩幅がチェックできる機能を備えた電波腕時計を2017年10月に発売した。年齢・性別、体重などを入力すると目標歩幅を設定。自動で歩幅を計測して、目標より広ければ「ヤッター」、狭ければ「ガンバロー」など4段階で液晶表示する。価格は7000円(税抜き)。

 1年前から商品モニターとして毎日使っている都内の会社役員、金子慎さん(50)は「続けていたら、足がよく動くようになってきた」と話す。

 旅行大手のクラブツーリズム(東京・新宿)はシニアに健康習慣を身につけてもらうツアーを長野県茅野市で5月と6月に計3回実施した。主に70歳代が、谷口博士が監修した速歩のメニューに取り組んだ。

 ツアーに参加した東京都八王子市の小山秀子さん(76)は「買い物やコーラスの練習で出かける時に歩幅を意識して歩く習慣がつきました。無理せず自然にできるので私たちのような年代には向いてますね」と話す。時間がある時は普段使っているバス停の1つ手前で降りて自宅に速歩で戻るようになったという。

 クラブツーリズムは9月以降も70歳以上を対象にツアーを実施する。

 運動が苦手な人でもお金をかけずマイペースで継続できる速歩。足腰の衰えを予防し、健康寿命を延ばすため、明日から試してみてはいかがだろうか。

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脳に刺激、認知症予防にも

 歩幅の狭い人は脳の認知機能が低下するリスクが高い――。東京都健康長寿医療センターが高齢者666人を対象に歩行状態を4年間かけて追跡調査を実施。歩幅を「広い」「普通」「狭い」の3グループに分けて調べたところ、「狭い」グループは「広い」に比べて認知機能が低下するリスクが3.39倍も高いことがわかった。

 一方、歩くテンポは、「低い」(遅い)は「高い」(速い)に比べて1.01倍と、低下リスクにほとんど差がなかった。

 谷口博士によると、通常の加齢変化よりも早く歩行機能の衰える人がいて、それが歩幅に現れる。歩幅の狭さは認知症のリスクが高まっているシグナルという。「歩幅が狭くなるのは筋肉量の減少に加えて、足を前に出そうとする脳からの指示がうまく伝わらないため。普段から意識して歩幅を広くし、脳への刺激を与えることは認知症予防に役立つ」という。

(近藤英次)

[日本経済新聞夕刊2018年7月11日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「フィットネス」からの転載です。