臨床研究スマホが変える 大学、生活習慣病など分析
個人の参加手軽に 膨大データ収集
日本経済新聞電子版
研究にはこれまでに600人弱が参加した。研究責任者の東大の脇嘉代特任准教授は「開業医にかかっている人も含め幅広いデータ収集が可能で、糖尿病の進行と日常生活の関係をより詳しく調べることができる」と期待を寄せる。アプリを使った食生活や運動に対する指示が血糖値のコントロールに結びつくといった実績が積み上がれば、医療機器としての承認も目指すという。
臨床研究は病院に通院している患者らに頼んで参加してもらうのが一般的で、参加者は限られた。ただアプリを使えば地域を選ばず参加を呼び掛けられる。参加者も病院に足を運ぶことなく、仕事の合間や自宅にいるときなどに情報を送ることが可能。アプリが臨床研究の姿を変えつつある。
昨年11月、不整脈や脳梗塞の早期発見を目的に、国内で初めてアプリを使った臨床研究を始めた慶応大学。グループの木村雄弘特任助教は「従来は100人にアンケートするだけでも大変だったが、今回はすでに参加者が1万人を超えた。情報収集に関しては革命的だ」と驚く。
活用するアプリは「ハート・アンド・ブレイン」。参加者は不整脈や脳梗塞にからむ質問や、喫煙、息切れなどの有無について答える。さらにアイフォーンを左右の手のひらそれぞれに載せて目を閉じ、水平状態からの傾きなども測って送信。普段、診察室で行う運動評価検査さながらだ。
まだデータ収集の段階で、詳細な分析や役立ててもらうための情報提供はこれから。木村特任助教は「成果を参加者に還元する方法を考えなければ」と話す。
脈のゆらぎ管理
脈と脈の間隔のばらつき(脈のゆらぎ)を自分で管理・記録できるアプリも登場した。不整脈と生活習慣の関係を調べるため東京大学の藤生克仁特任助教が開発した「ハーティリー」。4月半ばに臨床研究を始め、5000人が参加した。
1日1回、1分ほどスマホに指を当てて脈拍を記録、1~2週間ごとに動悸(どうき)の有無の質問に答える。脈拍の情報とスマホに記録される運動量などを組み合わせて解析する。
脈のゆらぎが大きいと、不整脈の一つで心臓の心房という部分が小刻みに動く心房細動の可能性がある。心房細動は脳梗塞の原因の3割を占めるという。藤生特任助教は「不整脈はいつ出るか分からず、症状があまり出ないケースもある。健康診断の心電図だけでは見つけるのは難しく、日々のチェックが必要だ」と指摘する。
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