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口が開けにくい…顎関節症かも セルフケアで症状改善

 日本経済新聞電子版

口が大きく開かず、ハンバーガーが食べにくくなった……。これはアゴの関節がスムーズに動かなくなる顎関節症かもしれない。ストレスも原因の一つなので、こまめなリラックス方法でしっかり予防したい。

写真はイメージ (c)sitthiphong-123RF
写真はイメージ (c)sitthiphong-123RF

 耳の前に指をあてて口を開け閉めすると骨が動くのが分かる。ここがアゴの関節(顎関節)で、上顎と下顎の骨の間には、動きを滑らかにする関節円板がある。

 口を動かすときに音がしたり、口が開けにくくなったりする症状は顎関節症と呼ばれる。鶴見大学歯学部の小林馨教授は「関節円板のずれ、筋肉や靱帯の損傷、骨の変形などによって起こる障害の総称」と解説する。患者の顎関節を磁気共鳴画像装置(MRI)で調べると、関節円板がずれて骨の動きを妨げていることが多いという。

 東京医科歯科大学大学院非常勤講師の木野孔司さんは「命にかかわる病気ではないが、原因が分かりにくく、患者ごとに的確な治療を行うのが難しい疾病」と指摘する。

 歯のかみ合わせの異常が原因として歯を削る治療もあるが、症状が改善しない例もある。このため最近は、削るなど元の状態に戻すことのできない治療は避けられている。また、マウスピースを用いて筋肉の負担を減らし、痛みを改善する治療があるが、慢性化につながるケースも少なくない。

[画像のクリックで拡大表示]

 こうしたなかで、顎関節症の新たな原因として注目されているのが「歯の接触癖」(TCH)だ。

 通常は唇を閉じていても「上下の歯の間には隙間があるのが正常」(木野さん)。また、激しい運動や仕事に没頭したときには歯をかみしめることもあるが、一般的には長く続かない。筋肉や関節に負担がかかるため自然に口が開き、上下の歯の間に隙間ができるようになる。

 しかし、精神的なストレスが続いたり、パソコン操作に集中しすぎたりすると、上下の歯が接触したままの状態が長時間続くことがある。こうなると脳が、口をかみしめている状態を正常な様子と勘違いして、アゴの周囲の筋肉を働かせ続ける。東京医科歯科大学の調査では、歯が触れあったままのTCHによって、アゴの筋肉や関節に障害をもたらすケースが多いことが明らかになった。

 最近はアゴの筋肉をリラックスさせ、正常な状態に戻す治療が行われるようになってきた。かつてはアゴを動かさないよう指導されていたが、口を開き筋肉を伸ばすストレッチが勧めらていれる。

 さらに、無意識のうちに歯をかみしめ続けないようにする手法として、木野さんは「貼り紙法」を提案する。

 仕事で使う机まわりや、台所、玄関などよく目にするところに「リラックス」などと書いた付箋を貼っておく。それが目に入ったら、口を開けて息を吐きながら全身の力を抜く習慣をつける。「2カ月ほど続けると、アゴの関節の動きが正常化し症状が改善する」(木野さん)

 初期の顎関節症ならセルフケアだけで症状が改善することが多い。小林教授は「2週間から1カ月続けても症状が改善しない場合は、地域の大きな病院の歯科・口腔(こうくう)外科でMRI検査を受けてほしい」と助言する。関節リウマチなど他の原因が隠れていることもある。

 人間の成長過程においてアゴの骨の完成は遅く、女性では18歳、男性では20歳まで続くとされる。小林教授は「未成年、とくに小中学生の顎関節症はアゴの骨の発育障害の原因になる場合もあるので早めの検査を」と注意を促す。

 セルフケアをしながら、症状改善をしっかり見極める。アゴのトラブルの対処では重要なポイントだ。

(ライター 荒川直樹)

[NIKKEIプラス1 2020年5月23日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。

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