ふくらはぎの肉離れ 中高年、急な動きに要注意
日本経済新聞電子版
井上理事長らの調査ではテニスレッグが治るまでに平均30日ほどはかかっているという。その間は日常生活でも、つま先立ちといった動作は控えるよう勧める。整形外科医と相談したうえで、靴にふくらはぎの負担を軽くする中敷きを入れる手もある。
大切なのはしっかり治してから運動を再開すること。「動けるから大丈夫」と無理をしてしまい、結果として筋肉へのダメージを大きくしている人が少なくない。増本院長は「もう治ったと感じても、つま先立ちしてかかとを上げ下げする『カーフレイズ』という運動をあえて慎重にやってみて、痛みや突っ張り、違和感がでないかしっかり確認してほしい」と話す。
予防法としては筋力トレーニングや体の柔軟性を維持するストレッチがよく知られている。カーフレイズもふくらはぎの筋肉を鍛える動きだ。ただ筋トレやストレッチだけで完全に防ぐのは難しい。
増本院長が重視するのは筋肉をコントロールする神経の働きだ。「体を動かすときは通常、縮む筋肉と伸びる筋肉がうまくバランスをとっている。加齢によって神経と筋肉の連係がうまくいかなくなるとこのバランスが崩れ、筋肉に異常な負荷がかかりやすい」と説明する。
神経と筋肉の連係をよくするためにも日ごろから筋肉の動きを意識するのが大切。増本院長が勧めるのは体を満遍なく動かせるラジオ体操だ。
井上理事長は「気温が上がるこれからの季節、水分不足になると筋肉をかたくしてしまう。テニスレッグの原因になる」と警鐘を鳴らす。汗をかいてからではなく、運動の前に給水しておきたい。中高年の場合、屋外に出る前に、室内であらかじめ体を動かして心拍数を上げておくのも予防に役立つという。
しっかり歩ける脚を保つのは健康寿命を伸ばすのにもつながる。適切な運動の知識と習慣を身につけて、脚のトラブルを防いでいきたい。
(ライター 荒川直樹)
[NIKKEI プラス1 2021年5月15日付]