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高齢者のてんかん、認知症と誤解も 入浴時などに注意

 日本経済新聞電子版

子どものころに発症する病気と思われがちな「てんかん」だが、高齢になって初めて発症する患者が増えている。しかし高齢者のてんかんは、けいれんなどの激しい発作を伴わない患者が多く見逃されがちで、似た症状から認知症と間違われることも少なくない。適切な治療をすれば日常生活を支障なく送ることができるので、早期の発見や周囲の協力が大切だ。

周囲の対処法を書いたヘルプマークを外出時は身につけておく

 「60歳代後半から発症率が上がる。女性より男性が多い」。てんかんに詳しい新宿神経クリニックの渡辺雅子院長は高齢者のてんかんについてこう説明する。

 てんかんは以前は主に幼少期に発症する病気と考えられていた。しかし現在は成長するといったん下がる発症率が高齢になると再び上がり始めることが分かっている。欧米の研究では70歳以上では10万人あたり100人、80歳以上では150人が発症し、10歳以下の小児より高い。日本でも高齢化が進むにつれ、新たに発症する高齢者が増えているとみられる。

 ただ、てんかんというと一般に思いうかべるような、けいれんなどを伴う激しい発作を起こす患者はまれだ。急に動作がとまってしばらくボーっとするなどの穏やかな発作がほとんど。また過去の記憶がなくなるといった症状も出る。てんかんと気づかずに放置されたり、認知症と間違われたりする患者が少なくない。

 同じ記憶障害でも高齢者のてんかんは昔の印象的な出来事から忘れていく。認知症では直近のことを忘れて、過去のことは覚えているのとは対照的だ。

 認知症と違い、高齢者のてんかんは治療すれば日常生活に支障なく暮らせることが多い。一般に治療薬で発作が抑えられるてんかん患者は70%程度とされるが、高齢者のてんかんでは約90%に効果がある。

 ただ治療を始めてもしばらくは発作を起こすことがあり、日常生活での注意が必要だ。

 家庭で心配なのは、まず入浴時。できれば家族などが一緒に風呂場に入り、入れないときは頻繁に声を掛けるなどして安全を確認したい。

 風呂場では意識を失うなどして溺れることがないよう、シャワーを活用。立って使うと転倒する危険もあるので、イスに座って使用する。湯船につかる場合はお湯は少なめにして、顔がお湯につからないように注意する。発作が起きたときは周囲の人がすぐに栓を抜いて、発作が終わるまで動かさない

 就寝時の窒息にも注意がいる。寝入りばなに発作を起こしやすい時間があり、うつぶせに寝るなどして窒息しないよう、だれかが患者が寝入るまで見守るのが望ましい。顔が埋まるような大きく柔らかい枕は発作時の嘔吐(おうと)物で窒息する危険があり、枕は硬めのタイプを使いたい。

 発作はリラックスしているときに起きやすいが、ふつう数分程度で終わる。転倒してケガをしたり、けいれんが長時間続いたりすることなどがなければ「発作が起きても、あわてて救急車を呼ばなくてもいい」と渡辺院長は説明する。

 外出時に発作を起こしたときのために、自治体などが配布している援助が必要な人のための「ヘルプマーク」を使うことも有効だ。緊急連絡先やてんかんであることなどと併せて、しばらく安全な場所で休めば発作が収まることなどを記入しておくと、周囲も対応しやすい。

 高齢者のてんかんは治療しないで放置すると、認知症も起こしやすくなる。症状に心当たりがある場合は、早めに専門医を受診するようにしたい。

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薬は少量で効果

 高齢になって発症するてんかんは、小児など若い時期に発症するてんかんと比べて様々な違いがある。若年者は大脳全体が興奮して発作を起こす「全般てんかん」が多いのに対して、高齢者は大脳の一部が興奮する「部分てんかん」が多い。脳卒中など原因が分かるものもあるが、分からないタイプも高齢化が進むにつれて増えている。

 高齢者のてんかんでは治療薬が効きやすい一方で、服用量が多すぎると眠気やふらつきなどの副作用を起こす危険もある。通常は成人患者の4分の1から3分の1くらいの量から服用する。ただ薬を飲むのをやめると再発する危険が高く、発作が起こらなくなっても飲み続けることが大切だ。

(編集委員 小玉祥司)

[日本経済新聞夕刊2019年2月13日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「介護に備える」からの転載です。