スマホ使い過ぎ… 腱鞘炎からばね指に
手術も選択肢、「グー・パー」が効果的
日本経済新聞電子版
指の使いすぎなどで起こる腱鞘(けんしょう)炎は痛みを伴う。さらに曲げ伸ばししにくくなると「ばね指」と呼ぶ状態になる。指を伸ばしたときにバネのようにはじけるため、その名が付いた。従来は重い物を頻繁に持ち上げる人に多かったが、最近はスマートフォン(スマホ)などを長時間操作する人でもみられる。指などを酷使しないことが大切だが、薬や手術で治療するのも選択肢だ。
手を握るなどする際に強い力を発揮する筋肉は前腕にある。その力を伝えるのがひも状の腱だ。指は手のひら側に屈筋腱があり、自由に曲げ伸ばしできるようになっている。この腱に力がかかっても浮き上がらないように抑えているのが腱鞘で、トンネルのような形をしている。
付け根に痛み
腱鞘炎は腱と腱鞘がこすれあって炎症が起こる。指を動かすたびにこすれると、進行して引っかかりが生じ、ばね指になる。手を握る際などに、指の付け根や関節に痛みが生じる。重症化すると、指を曲げ伸ばしする際にゴリッという音が起き、激しい痛みを伴うこともあるという。近畿大学医学部整形外科学教室の冨山貴司医学部講師は「腱が炎症を起こし腫れて肥大し、腱鞘に引っかかってしまう」と説明する。
腱鞘炎やばね指の最大の原因は指の使いすぎだ。重いものを手で握って持ち上げる仕事に従事する人や、高齢者の介護をしている人が患うことが多い。野球やゴルフ、つりなど棒状の道具を強く握るスポーツなどをやりすぎても起きる。パソコンなどを長時間使い続ける人が発症するケースも増えている。
また、腱や腱鞘が硬くなる高齢者のほか、40~50代の更年期やホルモンのバランスが崩れやすい産後の女性などでも多く見られる。抗がん剤治療が原因で起こる例もある。
ばね指と同じ腱鞘炎だが、手首の親指側に痛みが出ると「ドケルバン病」(狭窄性腱鞘炎)と呼ばれる。佐野記念病院(大阪府泉佐野市)の宮本洋医師は「ばね指より患者は少ないものの、スマホを親指で操作するなどして酷使すると、このタイプの腱鞘炎になる可能性がある」と指摘する。
大阪府内に住む70代女性Cさんは、趣味の手芸で針を使ううちに、指が動きにくくなった。指を曲げたり伸ばしたりする際に引っかかる感触があり、痛みも感じた。そこで整形外科を受診したところ、ばね指だと診断された。女性は手術で治療することを選び、腱を囲んでいる腱鞘の一部を切り取った。この治療で痛みや曲げ伸ばし時の違和感が解消した。
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