スポーツの前後 十分なケアでケガ防ぐ
日本経済新聞電子版
陽気がよくなると、思い切り体を動かしてみたくなるもの。新しいスポーツに挑戦する人も多いだろう。だが、運動をする前と後に、きちんと準備、ケアしないと、ひどい筋肉痛やケガに見舞われることがある。その結果、せっかく始めたスポーツをやめてしまうことになるかもしれない。正しいケアの方法を専門家に聞いた。
日本整形外科学会認定スポーツ医で、横浜つづき整形外科(横浜市都筑区)院長の伊藤勝敏さんは、ケアのポイントを3つあげる。(1)いきなり負荷の高い運動をしない(2)準備運動・整理体操をする(3)アフターケアをする。当然と思われていることだが、きちんと守っていない人も見かける。
少し汗ばむ程度
体が十分、運動をする態勢になっていないのに、急に強い負荷がかかり過ぎると不具合を招きやすい。まず、少し息が切れたり、汗ばんだりする程度の軽めの運動から始めることが大切だ。準備運動が足りないと、肉ばなれや捻挫、筋肉痛の原因になることもある。
準備体操として、筋肉をゆっくり伸ばしてそのまま姿勢を維持する「静的ストレッチ」をすることが多い。ただ、これはスポーツの準備には向かないという考え方がある。筋肉が弛緩(しかん)してうまく収縮せず瞬発力を引き出しにくくなるというのだ。
「最近は、同じストレッチでも『動的ストレッチ』をスポーツの準備体操として取り入れることが多い」と伊藤さんは話す。反復的に体を動かしながら、肩甲骨周りや、股関節など腕や足の関節を曲げ伸ばししたり、回したりする。心拍数を上げ、関節の可動域を大きくして運動に入る態勢を整える。
一方、強い運動をした後の整理体操には、静的ストレッチが向いている。疲労で硬くなった筋肉をあまり負荷をかけずにほぐし、血流を促すことで疲労回復を早められるからだ。具体的な方法を元世界陸上競技選手権大会日本代表で、トレーニングジムZERO(長野県安曇野市)専属トレーナーの原義美さんに教えてもらった。
ウオーキングやランニング、サイクリングなどの足を使うスポーツをする人向けには「おじぎのポーズ」。上半身をゆっくり倒し、筋肉が伸びているのを意識する。太ももの後ろや、ふくらはぎをほぐすことができる。
様々な運動で体を支える役目をする内ももは、相撲の「四股踏みのポーズ」でケアする。両膝を開いて腰を落とす。背中を伸ばしたいときは、傘や靴べらなど手近な道具を使う手もある。足首を回すことも忘れずに。ストレッチは1カ所につき10~15回、それをできれば2セットする。
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