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カフェインとりすぎ注意 錠剤など普及、増える中毒

 日本経済新聞電子版

カフェインの過剰摂取による急性中毒が増えている。カフェインは依存性があり、短時間に大量に摂取すると、めまいや過呼吸などの中毒症状が出て死に至る恐れもある。近年は眠気覚ましや疲労回復のため、若者を中心にカフェインを含む錠剤やエナジードリンクが広まっている。国は市民向けの勉強会を開くなどして過剰摂取への注意を呼びかけている。

写真はイメージ=(c)Pablo Hidalgo-123RF

 2016年10月、関西医科大病院(大阪府枚方市)の高度救命救急センターに20代の女性が急性カフェイン中毒で運ばれてきた。女性は意識不明となり心肺停止の状態に。救命医らが心臓マッサージや電気ショックなどの処置に当たって一命をとりとめた。女性はその後、治療のため約2週間入院した。

心臓への刺激作用

 女性は自殺目的で数時間のうちにカフェイン錠剤を200錠以上飲んでいた。摂取量に換算すると23グラムだったという。寺嶋慎也医師は「服用後すぐに家族に発見されて病院に運ばれてきたため助かった。カフェインを大量に摂取した場合は一刻も早く治療することが重要だ」と説明する。

 同センターでは10年までの5年間に急性カフェイン中毒の患者を受け入れたことはなかったものの、11~18年には7人が救急搬送されたという。

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 コーヒーやお茶、医薬品など幅広く含まれているカフェインには中枢神経系を興奮させて眠気を払う作用のほか、疲労軽減の効果もある。ただ心臓への刺激作用もあり、短時間で1グラム以上摂取すると動悸(どうき)や過呼吸、不整脈、吐き気などの中毒症状が現れ、5グラム以上が致死量とされている

 厚生労働省などによると、カフェイン濃度は粉から抽出するドリップコーヒーや顆粒(かりゅう)を湯で溶くインスタントコーヒーでも100ミリリットル当たり60ミリグラム程度とほとんど変わらない。紅茶やほうじ茶、ウーロン茶は同20~30ミリグラムだ。13年ごろから日本国内で販売が拡大したエナジードリンクや眠気覚まし用飲料では、100ミリリットル当たり300ミリグラム含む製品もある

 カフェインの取り過ぎで吐き気やめまいなど軽い症状であれば治療は薬の服用と点滴で済むが、重症の場合は体内への吸収を抑えるため、多くの物質と結合する吸着剤「活性炭」を投与したり、血液透析をしたりする必要がある。

 コーヒーやお茶、エナジードリンクによる中毒例はほとんどないが、会社員や受験生らが眠気覚ましでコーヒーと併せてカフェイン錠剤を飲む人もおり、全国でも救急搬送されるケースが増えている

若者中心に広がる

 日本中毒学会(東京・中野)が救急医療機関38施設から回答を得た調査によると、11年度から15年度の間にカフェイン中毒で救急搬送された患者は101人で、このうち3人が死亡していた。97人が錠剤を服用し、患者の年齢の中央値は25歳だった。13年度以降の搬送が86人で全体の85%を占めたという。

 調査した埼玉医科大の上條吉人教授(救急医学)は「カフェイン錠剤はドラッグストアやインターネット通販で手軽に買えるため、若者を中心に広がっている。一度に大量に摂取すると死に至る危険性があることが十分に認識されていない」と指摘する。

 1日当たりの摂取量については、日本では「個人差が大きい」などとして、明確な基準を設けていないが、中毒患者の増加を受け、国はリスクも知ってもらうため対応を強化している。

食品安全委員会が市民向けに開いたカフェインに関する勉強会(2018年3月、大阪市)
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 内閣府の食品安全委員会はホームページ(HP)でカフェインの影響などを解説する「ファクトシート」を公表。17年度にはカフェインの安全性をテーマに市民向けの勉強会を東京、大阪、札幌で計4回開き、約180人が参加した。

 勉強会ではコーヒーやお茶に含まれるカフェインの量や、海外で示されている適切な摂取量などを説明し、19年度にも全国での開催を計画しているという。

 厚労省もHPで、いずれもカフェインを含む医薬品と飲料の併用を避ける必要があるとして、医薬品の使用方法などを記載した「添付文書」をよく読むよう呼びかけている。

 このほか、カフェインを多く含む飲料と酒を同時に摂取すると、アルコールによる健康への悪影響を受けやすくなるとする米国疾病予防管理センター(CDC)の指摘も紹介している。

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海外で錠剤購入規制 成人「コーヒー3杯分」推奨

 海外では一部にカフェインの摂取量の推奨基準があるほか、錠剤の購入量を規制する動きもある。

 カナダ保健省やドイツの研究機関は、健康な成人の1日当たりの最大摂取量として400ミリグラム(コーヒー3杯分程度)を推奨している。子供はカフェインへの感受性が高いとして、カナダ保健省は大人よりも摂取量を制限する基準を定めている。

 特に注意が必要になるのは妊婦だ。

 英国食品基準庁は2008年、カフェインを過剰摂取すると流産や胎児の発育の遅れを招く恐れがあるとして、妊婦の1日の最大摂取量を200ミリグラムにするよう求めた。世界保健機関(WHO)も胎児への影響は確定していないとしながらも16年に妊婦の1日の摂取目安を300ミリグラムと示している。

 一度にカフェイン錠剤を大量に飲んで死亡するケースが相次いでいることを受け、欧米の一部の国では一度に購入できる量を制限している。

 日本では薬剤師の説明がなくても、ドラッグストアやネット通販などでカフェイン錠剤を簡単に購入できる。医療関係者からは「一度に購入できる量を制限すべきだ」との声も上がっている。

(加藤彰介)

[日本経済新聞朝刊2019年3月18日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。