メンタル不調、「ストレスチェック制度」で事前に防ぐ
義務化2年目
日本経済新聞電子版
武神氏はいくつかの「習慣」を勧める。1つが「構える」。「予想外のことが起きるからストレスになるので、最悪な事態も想定して(心の)扇を広げておくとよい」。また、適度に休んだり、旅行に出かけたりして緊張状態から抜け出す「区切る」も重要だ。
選んで優先順位を決める「捨てる」もある。自分ではどうしようもないことを四六時中考えても仕方がない。「不満にばかり目がいきがちだが、不満はなくしてもゼロにしかならない。プラスである『満足』を増やさないといけない」
「書く、話す、読む」も重要だという。「漠然としているから不安なので、書いたり話したりするとモヤモヤが晴れる」。実際、厚労省の労働安全衛生調査でも抱えているストレスについて誰かに相談すると9割の人が解消するか気が楽になったと回答している。
産業カウンセラーで精神保健福祉士の田中啓子氏も「言葉に出すことで頭が整理され、ストレス軽減への効果が大きい」と話す。
本人の言動などに気になる点が出てきたような場合は、家族や友人らが「最近何かあった?」と聞くだけで、メンタル不調の予防につながることもあるそうだ。
ストレスチェック制度 義務化2年目、なお課題
厚生労働省によると、2015年度に過労などに伴う精神障害で労災認定の支給決定を受けた件数は472件。これでも氷山の一角との声も多い。こうした状況を踏まえ、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が15年12月に始まった。
従業員50人以上の事業所には年1回のストレスチェックの実施が義務付けられている。アドバンテッジリスクマネジメントの調査では、高ストレス要因として医師による面接指導で指摘された項目は「仕事の量、労働時間など」が52.7%と最も多く、「上司との関係」(49.5%)や「仕事の内容(質)」(39.4%)と続く。
ストレスチェックの結果は事業者に開示されないが、医師面接を受ける場合は本人の申し出が必要なので会社に伝わってしまう。このため、処置を必要としながら手を挙げない人が非常に多いことが課題となっている。
(井上孝之)
[日本経済新聞夕刊2017年3月23日付]