低糖質食、もっと身近に 増えるメニュー
コンビニや外食、普段から肥満・糖尿病予防
日本経済新聞電子版
過食や運動不足などの生活習慣による肥満や糖尿病の対策として「糖質制限食」や「低炭水化物食(ローカーボ)」をうたった商品や外食メニューが増えてきた。課題だったおいしさも改善の兆しがあり、ダイエット食として限定的だったかつてのイメージは変わりつつある。気になる人は試してみてもよいだろう。
グラフィックデザイナーの小寺聡美さんが2014年に開いた「キッチン源喜」(岐阜県神戸町)は、低糖質メニュー専門のレストランだ。血糖値を上げる原因となる白米や小麦粉、砂糖は一切使わない。主食には玄米を出し、パウンドケーキはおからを原料にする。パンやピザの原料は大豆粉だ。甘みは体内に吸収されないラカンカで付ける。
ランチ(税別で1200円)はおかずだけなら糖質量は15~18グラム。一般的なローカーボの糖質量は1食あたり20~40グラムとされ、日本人が平均的に摂取する同約90グラムの半分以下だ。
デザイン会社に勤めていた小寺さんはジムに通い、ダイエットの指導も受けた。2カ月で10キログラム減量できた理由を調べ糖質制限食の効果と納得し、自ら店を持った。最近は関東や関西地方から店を訪れる人もいる。小寺さんは「低糖質食というと物足りない印象が強かった。それを覆して広めていきたい」と話す。
炭水化物から食物繊維を除いた主な成分が糖質だ。生命を維持する重要なエネルギー源だが、糖尿病患者や予備軍にとって血糖値を高めるやっかいな相手だ。
論文で示され脚光
糖質制限は1970年代に米国で発案され、効果的なダイエット法として日本に紹介された。糖質量が1食あたり7グラム以下の厳しい方法もある。おにぎり1個に含まれる糖質は約40グラム。ごはんを主食にする日本人に、糖質の代わりに脂質やたんぱく質を増やす食事は長続きしにくい。中断して体重が元に戻ってしまう例も多く、定着しなかった。
再び注目され始めたのは10年ごろ。低糖質食品の種類が増え、血糖値を高めない甘味料も受け入れられるようになった。北里研究所病院の山田悟糖尿病センター長は「糖質制限食で血糖値を改善する研究が海外で相次ぎ、論文で明確に示された影響も大きい」と話す。
山田センター長は糖尿病患者の食事療法を従来のカロリー制限から糖質制限に切り替えた。食品や流通業界などに低糖質の食品やメニューの開発を呼びかけ、13年には連携組織「食・楽・健康協会」を設立した。
タクシー大手、日の丸交通(東京・文京)は15年、同協会に参加するローソンと協力し「メタボ社員ZEROプロジェクト」を3カ月間試行した。健康診断で注意を受けた運転手40人にローソンのポイントカードを配布。小麦の外皮(ふすま)を使い糖質量を1個約2グラムに抑えたパンを買うと、ポイントが加算される。
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