低糖質食、もっと身近に 増えるメニュー
コンビニや外食、普段から肥満・糖尿病予防
日本経済新聞電子版
飲み薬並みの効果
都内のタクシー運転手の平均年齢は58歳で、コンビニエンスストアで弁当を買う人も多い。運動不足も重なり生活習慣病に陥りやすい。健康に問題を抱えての運転は重大な経営課題だ。試行の結果、おにぎりや弁当からふすまのパンやサラダを食べるメニューに代わり、血糖値が下がる傾向があった。食後の血糖値が高くなる5人では飲み薬並みの効果がみられた。日の丸交通の西川浩康課長代理は「予想以上の成果」と驚く。
食・楽・健康協会の協力企業は糖質を減らした冷凍のパスタやビール、プリンなどの商品を販売中だ。種類を増やして生活習慣病の予防につなげたい考えだ。
長期的な効果は未知数
1日の糖質量が130グラム以下という糖質制限食を長期間継続したデータは国内に少ない。運動や食事など様々な生活習慣の条件を整えて多くの市民の健康を調べる研究が難しいためだ。永寿総合病院(東京・台東)の渥美義仁糖尿病臨床研究センター長は「糖質制限食が結果としてカロリー摂取も抑制している可能性もある。どちらの効果なのか簡単には判別できない」と解説する。
糖質制限食に学会の基準やルールはなく採用しやすい半面、推奨する医師らによって方法がまちまちになる課題もある。極端に糖質を減らすと低血糖で意識を失う危険もある。
糖質に代わるエネルギー源として、脂質とたんぱく質の割合が増えると、人によっては糖質制限食を「油っぽい」と感じてしまう。脂質の成分もいくつか種類があり、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く摂取すると、動脈硬化を進行させる悪玉コレステロールを増やすリスクが高まる。脂質成分の選択が重要になる。
また、腎臓の機能が落ちている人はたんぱく質の割合が高くなると腎臓に負担がかかってしまう。健康な人が試す場合には大きな問題はないが、糖尿病患者の場合は注意が必要だ。渥美センター長は「担当医と相談する必要がある」と強調する。
(編集委員 永田好生)
[日本経済新聞夕刊2016年3月31日付]