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胃がん手術後は食事少なく 食欲戻っても食べ過ぎ注意

 日本経済新聞電子版

年間約13万人がかかる胃がんは、すべてのがんのなかでも2番目に新規患者が多い。検診による早期の発見や内視鏡手術の発達が進むが、まだ胃を切除する手術を受けなければならない患者も少なくない。消化に欠かせない胃は切り取ると再生はしない。手術後の回復や快適な生活のために食事には注意が必要だ。

写真はイメージ=(c)Ivan Shidlovski-123RF

 「手術後は、切除した臓器は元には戻らない。胃も元の大きさには戻りません。小さくなった胃での食生活に慣れることが必要です」。千葉県がんセンター食道・胃腸外科の鍋谷圭宏部長はこう注意を促す。

 検診の普及などで早期に発見される胃がんが増えてきたが、早期がんなら手術で切除する部分が小さくてすむとは限らない。がんができた場所によって、どこをどれだけ切り取らねばならないかは異なる。加えて検診で早期にがんがみつかると、患者自身は自覚症状がない段階で手術することも少なくない。手術がすめばすぐに元の生活に戻れる、と考えがちだが、そう簡単ではない。

 手術後の生活が軌道に乗るまでには通常、3~4カ月から半年程度はかかる。段階を追って食事のしかたや内容を変えていき、日常生活に不自由がないように慣れるようにする。

 手術してから1カ月程度は、一度に多くの食事ができない。1回あたりの食事の量は減らして、間食も組み合わせながら1日6回程度の食事で必要な栄養をとれるようにする。間食は生活時間に合わせて、早く寝る人は1日5回にするなど柔軟性を持たせるとよい。

 ごはんはおかゆにして、食材は細かく刻むなどする。ゆっくりよくかんで食べることも心がけたい。消化によくない食材は避けたいが、食べたいと思うものははじめから制限せず「一口食べてみて、おなかが張ったりするようならまだやめておくとよい」と千葉県がんセンターで食事指導を担当する管理栄養士の河津絢子氏は話す。

 この時期は大半の患者は体重が大幅に落ち、なかには10キログラム以上体重が落ちる場合もある。あまり体重が減りすぎると、その後の経過にも悪影響が出る。食欲がわかない場合も多いが、時間がきたら意識して食事をとるようにしたい。

 1カ月を過ぎると、体調も回復し始めて食欲も戻ってくる場合が多い。食事の内容を徐々に変えていき、3~4カ月後に通常の食事内容や回数に戻るイメージだ。食べる量が増えたり体重が減り止まったりしたら食事回数を減らしていく。

 一方で食欲が戻ってくると、食べ過ぎが起きやすくなる。食べ過ぎて吐いてしまうと、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こす危険がある。早食いでむせて誤嚥性肺炎を起こした例もあるという。半年を過ぎると食べ過ぎをどうコントロールするかも大切になってくる。

 さらに胃を切除したので、手術前と同じ量を食べても吸収される栄養は減っている。特に鉄分やビタミンB12は吸収が減り、貧血を起こしやすくなる。食事だけで十分な量をとるのは難しいので、クスリなどで補うことが必要だ。

 胃がんは、がんができる場所によって切除する場所や範囲が異なり、手術後の経過も患者により様々だ。食後の倦怠感(けんたい)などのダンピング症状や腸閉塞といった後遺症も起きやすい。「ずっとこのままの状態が続くのか」と心配な気持ちにもなりやすいが、「時間の経過で手術後のからだに慣れて日常生活ができるようになる人が大半」と鍋谷部長は話す。体調に合わせた食事をしながら、からだや気持ちを慣らしていくようにしたい。

◇     ◇     ◇

患者の交流、レシピ紹介も

 大手の医療機関では手術後の食事について充実した指導を受けることもできるが、規模が小さな医療機関では十分なサポート体制が整ったところばかりではない。胃がんの手術を受けた患者の交流組織「アルファ・クラブ」は、会誌やサイトを通じて会員向けに手術後の食事に関する様々な情報を提供、会員の工夫したメニューのレシピを紹介するなどしている。

 現在は新型コロナウイルス感染症の流行で休止しているが、医師を招いた懇談会や会員どうしの情報交流会も開催してきた。自身が胃を全部摘出する手術を受けた同クラブの久本剛事務局長は「患者どうしだと悩みの相談や自分の工夫も話しやすい」と説明する。食事の悩みだけでなく、「手術後におならが出やすくなった」という悩みの相談などもあったという。

(編集委員 小玉祥司)

[日本経済新聞夕刊2021年3月17日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。

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