歩いて健診受けて景品ゲット 健康ポイントが励みに
医療費の抑制につながるか
日本経済新聞電子版
現金の支給も
特典を設けても参加しない人は多い。先行する長岡市でも、会員は全人口の1%程度。参加するのは日ごろから健康への意識が高い人で、生活や運動習慣に問題がある人はあまり取り組まないという意見もある。実験を手掛けた筑波大の久野譜也教授も「無関心層を呼び込む仕掛けが重要」と指摘する。
参加を促す究極の存在ともいえるのが現金だ。岡山県総社市は14年度、保険診療を1年間受けていないなどを条件に、国保加入世帯への1万円支給を全国で初めて始めた。初年度は70世帯、15年度は82世帯に支給。「健康のため頑張ったことが認められた」と好評で、担当者は「健康づくりの機運を高める」と話す。
ただ受診しないことが条件の特典には、日本医師会を中心に「過度な受診抑制につながる」と懸念する声が強い。
同市は「非受診」が一人歩きしないよう、支給条件として40歳以上には生活習慣病関連などの健診を義務づける。「具合が悪ければ我慢せず受診しているはず」(担当者)。厚労省は現金給付を禁じてはいないが、「市民の間で不公平感が生じるものは避けた方がいい」と消極姿勢だ。
団塊の世代がすべて75歳以上になる25年には医療費が54兆円に膨らむ見通し。国民の負担増だけで賄うのは限界がくる。健康維持や予防を公的保険制度にどう組み込むか、検討の余地は大きい。
メタボ健診 受診伸びず 医療機関と連携を
厚生労働省は生活習慣病の予防策として、40~74歳を対象に特定健康診査(メタボ健診)を実施している。
受診を健康ポイント制度に取り入れる市町村もあるが、2014年度の受診率は48.6%。目標の70%からは遠いのが現状だ。
特定健診は原則、腹囲が男性は85センチ以上、女性は90センチ以上で血圧や血糖、脂質の中で異常値が2つ以上ある人を「メタボリック症候群」と判定する。
保険者別にみると、市町村の国民健康保険が受診率35%と低い。市町村国保の加入者の平均年齢は51.5歳で、65~74歳が4割近くを占める。ショッピングセンターでの実施など利便性向上を図るが、効果はいまひとつだ。
厚労省の調査では、受診しない主な理由は「医師に受診中」が多い。主治医は生活習慣病を念頭に診療しているとは限らず、医療機関と連携を深めて受診を促す必要がありそうだ。
(奥田宏二、鳥越ゆかり)
[日本経済新聞朝刊2017年3月20日付]