心不全、チームで患者支援 退院後まで継続的に指導
日本経済新聞電子版
高血圧や心臓の病気で心臓のポンプ機能が低下して、血液を全身に送り出せなくなる「心不全」が人口の高齢化に伴って増えている。現在、国内の患者数は約120万人に達し、2030年には130万人になる推計もある。運動療法や食事療法など生活習慣の改善で入院を予防するため、多職種のチームで患者を支える試みが始まっている。
兵庫県尼崎市に住む70代男性は心不全で入退院を繰り返している。肺のうっ血で少し動いただけでも息切れする。倦怠(けんたい)感と息苦しさが強く、筋力が衰え、長い時間座っていられない。腎不全も併発しており、1月中旬には市内の県立尼崎総合医療センターに再入院した。
同センターは08年、全国に先駆けて専門の「慢性心不全チーム」を立ち上げた。医師、看護師のほか、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、健康運動指導士などが週1回、合同症例検討会を開くなど多職種が連携して治療に当たる。
その一人、看護師の宮地さやかさんは「慢性心不全看護認定看護師」。日本循環器看護学会が11年から育成を始め、現在300人を超えるまでになった。
宮地さんが詳細に聞き取った結果、日常生活で体重や血圧の管理が不十分なことが判明。医師と看護師が治療計画を立て、理学療法士は心臓の機能を回復するための心臓リハビリテーションを指導。管理栄養士が食事の注意点を話したり、薬剤師が薬を欠かさず飲むよう注意したりした。
「心不全は患者の生活習慣やリスク管理の結果など家庭の背景にまで踏み込まざるをえない」というのはチームを立ち上げた循環器内科の佐藤幸人科長。「医師の力だけでは限界がある。多職種のチームで入院から外来まで継続的に指導していくことが大切だ」と強調する。
再入院が2割減
日本では緒に就いたばかりだが、約40年の歴史がある海外の報告では多職種が関わって治療すると、再入院する患者が2割強減った。在院日数の短縮や患者の生活の質が向上したとの研究もある。
広島大病院(広島市)は12年に「心不全センター」を開設。「電子カルテにそれぞれが集めた情報と実施したケア内容を記入して情報を共有し、各職種がフラットな関係で議論している」(循環器内科の木原康樹教授)のが特徴だ。
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